僕という欠落品/アルジャーノン ページ13
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「今日はゲストに
アルジャーノン・オースティンさんを迎えております、本日は
よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「あの…アルジャーノンさんは
ドイツ出身ですよね、なので
ドイツ語で自己紹介なんかは…」
「僕ドイツ語できないんです。」
いつもこれの繰り返し。
ドイツを離れて早や20年以上。
なんで僕の母国はドイツだったのか、
それだけが未だに僕の欠落部分だと
思っている。
もし僕を見つけてくれる人が
いなかったらきっと僕は爪弾き者
だっただろう、そういった意味では
まだいいのかもしれない。
「今日は小学生のみなさんの質問に
答えて頂こうと思います。
それでは一つ目です。
ラジオネーム「えのぐ」さん
からです。」
パーソナリティさんは続ける。
『[science radio]のみなさん、
そしてアルジャーノンさん
こんにちは。
僕はこの前、先生に頼まれて荷物を
運びました。僕だけじゃなく他に3人同じ荷物を運ぶ子がいました。
その荷物は僕と同じくらいの大きさ
だったので押して運ぶことに
しました。が、荷物は重かったので
休みながら運びました。
運び終わったところには3人みんなが僕よりも早く運び終わってました。
「凄く重くなかった?」と聞いた
ところ「重くなかった」と返され
ました。
どうして僕だけ重く
感じたのでしょうか?』
正直びっくりとがっかりが
入り混じっている。
こんなの僕に聞かなくたって、
とは思うけど業界(ココ)では禁句
である。
「…ということですがどうですか?」
「これは静止摩擦と動摩擦というのがあってですね…」
僕は淡々と説明する。勿論子供にも
分かるくらいに噛み砕いて。
この後も僕じゃなくてもいい質問が
続いた。いや、そういう質問しか
なかった。
「…とここで岸博士が到着なさった
そうなのでここで交代と…」
「そうですね、
ありがとうございました。」
僕はそそくさとその場を出て行った。
病院に向かうタクシーが着いたという旨のメッセージが届いていた。
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