三十九巻 ページ39
『…………んん』
私がゆっくりとまぶたを開けると、そこには真っ白な天井があった。
身体を起こすとクラリと目眩がする。いったいどれだけ寝ていたのだろう。
それにしても…………
『なんか楽しい夢を見た気がする……』
幸せな楽しい夢を見ていたはずなのにさっぱり覚えていない。
思い出せそうで思い出せないから、もどかしい気持ちになる。
なんとか思い出そうと記憶をめぐらせていると、カチャリと扉の開く音がした。
「A………？」
扉から入ってきた女の人は私を見た瞬間、驚いたように目を見開いた。
この人は…………
『お、母さん？』
ポツリと名前を呟くと、お母さんは目に涙を浮かべて私のもとに駆け寄ってきた。
「Aっ……Aっ……！！虐められてたことに気づけなくてごめんね……」
私をぎゅうっと抱きしめて号泣するお母さんに、どんな反応をしたらいいのかわからなかった。
私………そういえばいじめられてたっけ……？
「もう、女の子なのに髪の毛がボサボサよ？ほら」
私から離れるとお母さんはクスクスと笑い、手鏡を渡してきた。
手鏡に写り混む自分の顔は、沈んだ暗い顔をしていて別人のように見えた。
もっと前は明るい顔をしてたはずなのに………。
………もっと前？
もっと前っていつのことだろう。
「あ、そうそう。一人の男の子がね、Aが倒れていたところを病院まで運んで来てくれたのよ。とってもイケメンでねー、お母さん恋しそうだったわ！あとでお礼しに行かないとね？あとそれと――――」
お母さんが何か言ってるが、手鏡にうつる自分の顔をじっと見ていたせいでまったく頭に入ってこない。
「―――ってA？聞いてる？」
私の様子を不審に思ったお母さんが、私の名前を呼んだ瞬間
『…………っ』
開いていた窓からかなり強めの風が私たちのほうへ吹いてきた。
その時、前髪が風に揺れ、顕になった額にちょうど風に吹かれた桜の花が重なったように見えた。
どくんと心臓がなる。
「大好きなら……俺達のところへ帰ってきてくれ。A。」
そうだ……………私のことを待っている人がいる。
『行かなきゃ……』
「え？ちょっと…Aっ！！！！」
かすかに聞こえたお母さんの声を無視して私は走り出した。
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うどん(プロフ) - 彩音さん» ありがとうございますー！！！頑張って描いたので嬉しいです！最後までお付き合い頂きありがとうございます！ (2020年5月28日 1時) (
レス) id: a3779bcd2c (このIDを非表示/違反報告)
彩音(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても好みのお話でした〜！そして最後当たりのイラストうますぎる･･････ (2020年5月27日 6時) (レス) id: 5d687b4a81 (このIDを非表示/違反報告)
うどん(プロフ) - 眠猫さん» とても嬉しい限りでございます。最後まで読んでくださりありがとうございました！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: a3779bcd2c (このIDを非表示/違反報告)
眠猫(プロフ) - 感動しました。少女の死んででも会いに行こうとするのなんてﾉω･､） ｳｩ･･完結おめとうございます！ (2020年5月23日 13時) (レス) id: 290d396106 (このIDを非表示/違反報告)
うどん(プロフ) - ロルくんさん» ありがとうございます！！頑張ります！！！！ (2020年5月2日 16時) (レス) id: a3779bcd2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うどん | 作成日時：2019年10月2日 21時
