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素直に否定出来ないのが悔しいのか、額を右手で覆いながら、彼は紙袋を目の前に突き出した。
「からかってたら照れて隠しちゃうから、ほら、はやく」
「……ありがとう、ございます」
差し出された紙袋をまじまじと見つめながらうけとる。袋からベロア素材の細長い箱を取り出し、開いてみると中から姿を表したのはネックレスだった。
華奢な銀色のチェーンの中央に1粒だけ取り付けられているのは、確か紫水晶とも呼ばれるアメジスト。四角く見えるバゲットカットが施されていて、手に取って少し角度を変えれば、より一層宝石がまばゆくきらめいた。
「わぁ、綺麗……」
自然とそんな言葉が漏れた。どこか慈愛を感じさせるような繊細な深みのあるむらさきが、見ているだけで自然と心を落ち着かせてくれる気がする。宝石なんて今まで誰にもプレゼントされたことがなかった。すると、途端に不安が頭をよぎる。
「本当に、私がもらっていいんですか?」
気後れしそうになる私を見て、彼はくくっと笑を零した。それから、今度はじっと見据えて頷く。
「あぁ、うん。最初はこんなん柄じゃないかも、って考えたんだけど。今は早く、お前さんがつけてるとこが見たい」
ダメ?と問いかけるように顔を覗き込まれて、懇願するような三白眼が私を追い詰める。正直、私はこの大和さんの顔が苦手だ。
だって、全てを許してしまう。絆されて、受け入れてしまって、後からとんでもないことをしたと顔から火を出すのがオチで。そんなこと、随分前からわかりきっているんだけれど。
葛藤の末にゆっくりと頷くと、彼は特徴的な三白眼を柔らかく細めて微笑んだ。
あぁ、ずるい。
その眼差しが、本当に心底嬉しそうなのがいけないんだ。ついうっかり、くらっと熱に浮かされでもしたらどうするのだ。
恨みがましく見つめられていることなどお構い無しに、ためらうような視線のあとで、何か言いたげに彼の口元が微かに動いた。
「あのさ……せっかくだし、俺がつけてもいい?」
「えっ」
「お兄さんにまかせてほしいなー、とか、なんちゃって……」
だんだん言葉尻が弱くなる彼を見て、自分でつけます、とは言えなかった。否、言いたくなかった。
大和さんにつけてもらいたい。彼の手が、指先が、自分の首に触れる距離まで運ばれることを望んでいる。そんな自分が少し恥ずかしい。でも、羞恥すらも心地よくなっているのもどうしようもない事実で。
「じゃあ……お願いしても、いいですか」
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