検索窓
今日:10 hit、昨日:8 hit、合計:16,107 hit

2 ページ6



素直に否定出来ないのが悔しいのか、額を右手で覆いながら、彼は紙袋を目の前に突き出した。

「からかってたら照れて隠しちゃうから、ほら、はやく」
「……ありがとう、ございます」

差し出された紙袋をまじまじと見つめながらうけとる。袋からベロア素材の細長い箱を取り出し、開いてみると中から姿を表したのはネックレスだった。
華奢な銀色のチェーンの中央に1粒だけ取り付けられているのは、確か紫水晶とも呼ばれるアメジスト。四角く見えるバゲットカットが施されていて、手に取って少し角度を変えれば、より一層宝石がまばゆくきらめいた。

「わぁ、綺麗……」

自然とそんな言葉が漏れた。どこか慈愛を感じさせるような繊細な深みのあるむらさきが、見ているだけで自然と心を落ち着かせてくれる気がする。宝石なんて今まで誰にもプレゼントされたことがなかった。すると、途端に不安が頭をよぎる。

「本当に、私がもらっていいんですか?」

気後れしそうになる私を見て、彼はくくっと笑を零した。それから、今度はじっと見据えて頷く。

「あぁ、うん。最初はこんなん柄じゃないかも、って考えたんだけど。今は早く、お前さんがつけてるとこが見たい」

ダメ?と問いかけるように顔を覗き込まれて、懇願するような三白眼が私を追い詰める。正直、私はこの大和さんの顔が苦手だ。
だって、全てを許してしまう。絆されて、受け入れてしまって、後からとんでもないことをしたと顔から火を出すのがオチで。そんなこと、随分前からわかりきっているんだけれど。
葛藤の末にゆっくりと頷くと、彼は特徴的な三白眼を柔らかく細めて微笑んだ。

あぁ、ずるい。

その眼差しが、本当に心底嬉しそうなのがいけないんだ。ついうっかり、くらっと熱に浮かされでもしたらどうするのだ。
恨みがましく見つめられていることなどお構い無しに、ためらうような視線のあとで、何か言いたげに彼の口元が微かに動いた。

「あのさ……せっかくだし、俺がつけてもいい?」
「えっ」
「お兄さんにまかせてほしいなー、とか、なんちゃって……」

だんだん言葉尻が弱くなる彼を見て、自分でつけます、とは言えなかった。否、言いたくなかった。
大和さんにつけてもらいたい。彼の手が、指先が、自分の首に触れる距離まで運ばれることを望んでいる。そんな自分が少し恥ずかしい。でも、羞恥すらも心地よくなっているのもどうしようもない事実で。

「じゃあ……お願いしても、いいですか」

3→←サプライズは君だけに



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者ホームページ:   作成日時:2019年5月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。