サプライズは君だけに ページ5
・
目下の悩み。
睡眠が浅いこと、彼氏が忙しくてなかなか会えないこと、仕事がうまくいかないこと。
問題点はそれらが依然解決の方向に向かいそうにないというところか。
ひとつが上手くいかないと、ドミノ倒しか悪循環のように延々と繰り返されるのがたまらない。たまらなく辛い。
でも、そんなことお構い無しに世界は回るワケで。
今日も仕事から解放されて、華麗にベッドへダイブを決める。
インターホンが来客を告げたのはお風呂も夕ご飯も済ませて息抜きにテレビを見始めたときだった。
覗き孔で確認してから扉を開けた。目の前に立っていた人物を招き入れると、彼は深くかぶっていた帽子とマスクを丁寧に取り外す。すると、姿を表したのはドラマからそっくりそのまま出てきたかのような美青年で。実際、彼はテレビの向こう側で活躍しているのだが、それはさておき。
二階堂大和。私の恋人である彼と、こうして正面から顔を合わせるのはいつぶりだろうか。紙袋とビニール袋が片手にぶらさがっている。中身がお酒だとしたら、彼は以前とまったく変わっていない。
「飲む?」
「飲みます、けど……」
連絡の1つくらいほしかった、そんな言葉はすぐに飲み込まれた。忙しいなか会いに来てくれた。それだけで、今は十分だ。
部屋にあがってもらうと、彼は荷物をテーブルに置き、ソファにしなだれるようにねころんだ。
「あ、これ俺が出てるやつだ」
「チャンネル変えますか?」
「んーん、そのまんまでいいよ」
私が缶ビールの蓋を開けると、よっこいしょと起き上がる。空いたスペースに座ると、ビニール袋の横の紙袋をひょいと渡された。
「はいどうぞ」
「えっ……いきなり何ですか、これ」
「プレゼントだよ」
「今日って何か記念日でしたっけ?……はっ、まさか物でご機嫌をとろうと」
「してません。そもそもお兄さん、そういうのあんまし得意じゃないって知ってるだろ」
確かにわりと面倒くさがりな彼がプレゼントなんて珍しい。でもそれなら尚更何か理由があるに決まっている。じっと視線をそらさない私を見て、彼は密かに嘆息した。
「まぁ、その、最近会えてなかったし。これからどんどん忙しくなって、そんな時間が更に増えるかもしんないなって考えちゃったんだよ」
どうやらそんな時、プレゼントを贈るのはどうかと思いついたらしい。
「なんか、離れてる時もそばにいられる感じがするかなって」
「……大和さんって、案外ロマンチストですよね」
「はいそこ黙って」
・
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ