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「どうもこうも、好きにすればいいのに。」
『…え、好きに?』
「そー。触りたい放題じゃん。いいねぇ近距離は。」
ブツブツと呟いてまた愚痴が始まりそうな佐久間をよそに、“触りたい放題”の現実にかぁっと顔が赤くなるのが分かる。
…らしくないだろ。こんなことで動揺するなんて。
今日は体から熱出しすぎて風邪引きそうだ。
そもそも触りたい放題じゃねぇよ。同意がないとダメだって。
…同意があればいいのか?
『…無理、考えすぎたらキリないわしんどい。
ちょっと俺の家でふたりきりは何するか分かんないから佐久間も来てよ。お願い。』
「えっ、俺今晩は忙しいから無理!ごめんね!
てかだから何してもいいんだってば!」
逃げるように、すっくと佐久間が立ち上がる。
恨めしげに見上げれば、右手に持ったスマホを隠すようにポケットにしまう。
そういうコトかと察したくもないことを察してしまう自分が憎い。
『ちょ、まって佐久間、!』
俺の懇願を振り払い「俺、忙しいの!」と、歩き出す。
そこではたと何かを思い出したように振り向いて、
「あっ、そうだ!」
『…なに?』
何やらアドバイスでも貰えるのかと期待したが、佐久間はあいつと同じ、黒い瞳を細めて穏やかに言った。
「照さあ、ふっかのこと泣かせたら俺が怒るからね。」
……なんでそこだけガチトーンなんだよ。
こんな時だけ年上ぶられて、佐久間との、ふっかとの歳の差を否が応でも感じてしまう。
いつもなら文句を言うところなのに、今ばかりはその迫力に気圧されてしまった。
『…はい。』
半ば無理やり返事をすると、よし、と頷き、ニカリと笑う。
…ほんとにタチ悪い。三十路って怖い。
ご機嫌に食堂を去っていく小さな背中をただ見送ることしかできずにいた。
【END】
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作者名:雪 . | 作成日時:2022年5月5日 1時