岩泉くんは切ない恋をしています。【HQ】 (ページ28)

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好きだ27 ページ28

どこに行ったかは分からないけど、耳の聞こえない唄ｻﾝがそんなに遠くに行くとは思えない。

とりあえず近くから手当たりしだいに探す。

『くっそ、芸大の学祭っても結構人来んだな！』

周りに変な目で見られながら大勢の人をかいくぐる。

すると遠くに見たことのあるスカートが見えた。

居た！！！

『唄ｻﾝ！唄ｻﾝ！』

聞こえないと分かっていてもとにかく呼ぶ。

『唄ｻﾝっ!!!』

『唄ｻﾝっ！好きだ。、、好きだっ!!!』

周りが何事かと俺を振り返る。
なのに大切な彼女は気が付かない。

あぁ、なんて切ないんだろう。

それでも！！

俺は彼女を抱えて飛ぶって決めただろ！！！！

『唄ｻﾝ！！！！！！』

多分今まで生きてきた中で最大級の大声だった。

その時、校舎内な筈なのに彼女へ向かって俺の後ろから追い風が吹いた、、、気がした。

そして、彼女が振り向いた。

まるで風に乗った俺の声が聞こえたみたいに。

唄「、、ぅ、？」

唄ｻﾝは不思議そうに真っ赤になっているであろう俺の顔を覗き込む。

俺は唄ｻﾝの目の前まで歩いていく。

彼女は未だ首を傾げたまま。

彼女の前に立った俺はとりあえず息を整える。

『絵、見た。』

ゆっくりと伝わるように語りかけるとみるみるうちに顔を赤くする唄ｻﾝ。

唄「ぁ、、う、、ぁ、。」

滅多に声を出さない彼女が小さな声を漏らしながらうろたえる。

『俺、感動した!!』

更にゆっくりと言うと彼女の目に涙が浮かんでくる。

『俺、唄ｻﾝならどんなハンデも抱えて飛んでやる。』

唄「っ!!!!」

俺の言葉に唄ｻﾝは、驚いたように口を手で塞いだ。