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3.夢のような気持ち【シモン・テラー/41】 ページ3

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 入学式。ついに待ちに待った入学式だ。まさか自分がアイリス学園に通うことが出来るとは思っていなかった。平和な世界で、また新たに学ぶことが出来るとは思いもしなかった。まさに、夢のような気持ちだ。学校、と呼ばれるものに通うのは小学校(エレメンタリースクール)以来で、自分が皆の輪に馴染めるか少し不安な気持ちもある。だが、それよりも興奮と歓喜の気持ちが上回った。
 ――希望王、絶望王、人類王。この目で姿を見るのは初めてだった。町で流れてくる噂でしか知らなかった人たちが、自分の目の前にいる。……かつて敵国に仇なそうとしたこんな俺なんかが、王族の目に入っても良いものなのか。なんとなく後ろめたい気持ちにもなる。


 『えー、であるからして、この学園の理念は……』

 各王の話も大詰めになり、入学式も終盤に近付いていく。周りを見ると思いの外うつらうつらと意識が朦朧としている生徒が見かけられる。すると突然、王達が息子娘にも挨拶をさせようと提案してきた。突然の思い付きで王族の席からは驚きの声が上がる。聞いているだけのこっちも驚いたのだ、席にいる当事者はその比ではないだろう。
 王族の子供の中で一番最初に壇上に上がったのは金髪の少女だった。人類王から渡されたマイクに驚きつつも、こちら()に向かって挨拶をする。

『初めまして。人類王の娘、リリィ・アイリスでしゅっ…』

 ……その瞬間、少しざわめいていた体育館が物音ひとつしない静寂に包まれた。
 噛んだ。それも盛大に。ぽつぽつと体育館の所々から笑い声が聞こえてくる。かくいう自分もまさかこの場で噛むとは思っていなかったのでさすがに少し困惑してしまった。えぇ……
 ……それにしても、どこかで見かけたことがある気がする。自分に残っている記憶は田舎で居候していた時の記憶と、……戦争の記憶だけだ。あの町で見かけたのならはっきりと覚えているはずだ。そうなるとしたら……いや、それはないか。だって壇上にいる彼女は人類王の養子(・・・・・・)だ。そんな人間が、あんな場所にいるはずがない。そう一人で納得しながら話を聞く。……ああ、続く話の内容を聞く限りでも明るく、真っすぐな人なんだろうなとひとりごちる。

 さて、次は誰が話をするのだろう。少し面倒だという周囲の雰囲気の中、シモンは興味津々に次の王族を待っていた。


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4.夢うつつ【ディス/白花桜】→←2.眠気と失笑【レネ・シルバ/みりばら】



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白花桜 - 更新しましたー (2020年6月7日 21時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
白花桜 - 更新しまーす (2020年6月7日 20時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
茶々(ピンク)(プロフ) - 更新しました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 52271b36b8 (このIDを非表示/違反報告)
茶々(ピンク)(プロフ) - 更新します……! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 52271b36b8 (このIDを非表示/違反報告)
時計(プロフ) - 更新しました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 242ac85fef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:響@雫3318 x他6人 | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2020年5月25日 12時

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