シャドウサイドストーリー。【裏】

4.可笑のアキノリ ページ4

アキノリの部屋



「あれ…今日は皆早いんじゃん。」


ファミリーサイズのジュースボトルと一緒にポテトチップスやコンビニで売ってる様なバアムクーヘンを大量に抱えたアキノリが部屋に入ってきた

これからパーティーでもしようと言うのか、真意は闇の中だが私たちの為に買ってきてくれたのならば話は別だ、有りがたく頂くとしよう

さて、コップは何処かな


「やる気に満ち溢れてるのは良いことだぞ〜、さ、今日も元気に怪奇案件行ってみよ〜！」

「うん。頑張ろうね、アキノリ君！」


ぞい！のポーズをしたアヤメを見た瞬間、アキノリはすぐに後ろへと倒れてしまった


「はいっ…頑張り”ま”じょ”う”ね”！」


時々聞こえる鼻水をすする音と、余計に鼻濁音が付いた声ですぐに泣いているのだと確信した

それぐらいでか。まぁ彼ならやりかねないが。

何事もなかったかの様に立ち上がり、何事も無かったかの様にパソコンの椅子へ腰かける

その周りを私たちがパソコンを覗き込む様な体勢で囲む

ブラウザが開かれ、左にあるお気に入りの欄からうすらぬらのHPへ飛んだ


「…あ。新着の書き込みがあるね。」


動体視力の良いトウマが、新着順と書かれた文字の右上の星マークを指差す

スクロールをしていく


「これ…だな」


【[件名:桜元町の集中行方不明事件]

最近、ペットが何者かに浚われて行方不明になる案件が多発している

行方不明になる奴には共通点があって、一つは桜元町の住人が飼い主であることで、もう一つは猫…(省略)
コメント:67件


「コメントの数が多いね…。」

「心の拠り所と言うか、家族が居なくなって心配なんじゃないのかな？」

「…確かに。それは一理あるかも」


アヤメ。私。トウマの順にその書き込みについて頷く

しかし、いつもなら率先して聞き込みとか調査をしたがるアキノリの様子が可笑しかった


「なぁんだ。どうせ猫の事だし、どうせ何日か後にすぐ帰ってくるって。」


この日は珍しく偉くまともな反応を返したのだ

彼がうすらぬらの書き込みに興味を示さなかったのは、今まで過ごしてきた一年間でこれが初めてだった


「でも、猫ちゃんがゆく…」

「さぁ、帰った帰った。今日の活動はもうおしまい」


アヤメに対して少し食い気味にそう言ったアキノリに、半ば強制的に部屋の外へ追い出されてしまった

たかが猫ごときで活動を休止するまでに至るとは…アレルギーだとか猫嫌いだとかは全く聞いたことが無い

理解ができない私達は、その場でアホらしく口を開けたまま互いの顔を見つめ合うことしか能は無かった

5.奇怪な考察道→←3.下らぬ分岐トーク

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す