19.拒みたい同意癖 ページ19
*
…彼の悪い癖である。
何かに困ればすぐアヤメに同意を求めようとするその姿は、まさにクラスの一軍女子を取り囲む部下的立ち位置の女子共の様であった
柔らかいはずの日差しが、今日は尖っていた
ギラギラとアスファルトの表面を照らす容赦のない太陽から避ける為に、人間達の殆どは駅のホームの屋根下に逃げ込む
だが。先日の雨のお陰でコンクリートに染み込んだ雨水が熱されて蒸発し、蒸し返される様な暑さがホーム内に逃げ込んだ私達を襲う
…もう逃げ道はない。
「あー、あれじゃないの?アキノリ。」
此方に向かってくる電車を指差すと、アキノリは怪訝そうな表情を一変させてニッコリと笑った
「おーっ、ありがてぇ〜…これでやぁっとエアコンの聞いた車内に入れるぜ〜…。」
「デブ、アホ。今、冬!
デブ、肉厚、だから暑がり。だぜ!」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!俺は肉厚でもデブでもなくて骨太なんだよ!」
…聞きなれたテンプレの様な会話を余所に、黙ってずっと自分の携帯をいじるトウマの姿は、何処をどう見ても全くと言って良いほどに暑さを感じさせない
今は冬だと言うのに…
予期せぬ暑さに準備も何も無いだろう。
……長袖の私と半袖のトウマ。
台風の後遺症として残った温帯低気圧のせいで襲って来る猛暑など誰が予想したか。しかも冬に。
「トウマ…暑くなさそうだね。」
トウマがスマフォの画面から此方へ視線を移す
「この前、ニュースで台風の予報があったから、もうそろそろかなって。
あとは…これかな。」
そう言って、彼がポケットから取り出したのは透明なビニール袋に包まれた丸い物…
「…飴?」
「うん。ミントとかハッカ系のスースーする飴。
僕、あまり汗はかかない体質だから、こう言う日はこれだけで結構充分だったりするんだ。」
「へぇ〜……。」
「良かったら一個あげるよ。」
「良いの?」
「うん。」
トウマの手に乗せられた幾つかの、色とりどりの飴の内の一つを、私はそっと摘まんで手に取った。
オレンジ色をした飴。たぶん柑橘系
「ありがと、トウマ。」
「…ん。全然。」
そう言うと、彼は再びスマフォに視線を落とした。
食べるのが、何だか勿体ない。
飴をズボンのポケットにしまい、私もそこ携帯を取ろうとしたとき、待ちわびていたアナウンスが、駅の構内に響き渡った。
『__間もなく〜拠廟山駅行きの電車が到着致します〜……』
ホームに居た人間たちの足が、一斉に動き出した
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名無しのダレカ - 紅白巫女w (2020年4月22日 19時) (レス) id: 6bf8819783 (このIDを非表示/違反報告)
#チョコラーメン - 寝高麗☆トラジローさん» コメントありがとうございます、ご指摘いただいた件ですが、改めて調べてみたところ、さくら元町の所在は東京との事でした。人の間違いを指摘できる立場でもないのに…申し訳ございません。また何か小説内での誤字や誤植がございましたらご指摘頂けると幸いです。 (2019年5月26日 19時) (レス) id: d51802be4f (このIDを非表示/違反報告)
寝高麗☆トラジロー - あれ?妖怪ウォッチの舞台って《東京》じゃなくて《九州》じゃなかったでしたっけ? (2019年5月26日 18時) (携帯から) (レス) id: e5ef8f5494 (このIDを非表示/違反報告)
#チョコラーメン - 雪葉さん» コメントと閲覧ありがとうございます、そして返信が遅れてしまい誠に申し訳ございません…。雪葉様から頂いた「!」マークを気力にして頑張って行きたいと思っていますので、今後ともこの小説を宜しくお願い致します (2019年3月10日 16時) (レス) id: 5d2ed15dfa (このIDを非表示/違反報告)
雪葉 - 更新楽しみにしています!頑張ってください! (2019年3月3日 17時) (レス) id: 3c70fe5d70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:#チョコラーメン | 作成日時:2019年3月2日 22時