未来の話 2話 ページ41
「……ん、イライ」
「すまない。起こしてしまったね」
ベッドに寝かせた時、小さな唸り声と瞼が開かれる。
「まだ寝ていていいよ。夕食は僕が作っておくから」
彼女は応えず、その頬に一粒の雫が流れた。
「……怖い夢を見たのかい」
壊れた心は、まだ治ってはいない。今でも時々悪夢にうなされているらしい。トラウマとなった出来事はきっと一生付き纏うのだろう。
シャツを掴んだ震える手を優しく包んだ。
「大丈夫、どこにも行かないよ。
……僕も隣で寝てしまおうかな」
夕飯は外に食べに行こうか。
そう言うと彼女は頷いたが、相棒からの視線が痛かった。外食となると君は留守番だもんね。
布を外して布団に入り込み、Aと目を合わせた。そうすると彼女は安心したように眠りにつくのだ。
ベッドボードに掛けられた布には紫のアネモネが刺繍されている。
「おやすみ。愛しているよ、A」
開いた窓から香る潮風が、彼女の髪を揺らす。
額に掛かったその髪をそっとどけることもなく、薄ピンクの唇にそっと口をつけた。
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えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます!花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……! (2019年9月22日 16時) (レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです!最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか?私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました!完結、お疲れ様でした! (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......!またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね!ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです!閲覧ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるみ | 作成日時:2019年7月13日 17時