39話 ページ39
「イライが、傍にいる………?あぁ私、貴方においてかれてから……ずっと辛かったの」
それから彼女は、嗚咽混じりにゆっくりと話をしてくれた。
僕が村を出てから、過半数が占い目当てだった客がぐんと減り、また前のように景気も悪くなっていったらしい。
それに酷く不満を持った誰かが、Aが僕を追い出したのだとありもしない噂を流した。
村人の怒りの矛先はAへと向かい、彼女を追い出すため教会を燃やし、皆で彼女が犯人だということにした。罰などと言って外の者を雇い、彼女を殺してもらおうとしたのだ。
「それで、私…………」
その先の言葉を濁らせ、顔が歪む。
もしエミリーさんの言った通り……つまりそういった暴行を受けていたなら、口にするどころか思い出すのも辛いだろう。
「もう、いいよ。話してくれてありがとう」
「………ごめんなさい。私、もう貴方と結ばれる、資格がないの」
そんなことを言いたじろいで離れようとする。
いつもは僕より一つ上手な彼女が、ボロボロと涙を流しながら身体を震わせている。ごめんなさいごめんなさいと謝りながら。
「……僕を、恨んだかい」
僕のせいで、たくさん辛い目にあって。そう聞くと顔を上げて
「……そんなわけない。イライを嫌いになんて、なれる訳ない。だから私ここに来たの」
あたりまえでしょう?というように答えた彼女が本当に愛おしく感じた。
君の、君との未来を守りたい。
今なら、どんな未来が見えてもきっと変えてみせられる。
「A、もう君を一人にしないよ」
ずっと弱虫の僕を覆っていた布を落とし、白い頬を両手で包み込み目を合わせた。
「っあ………イライの目、やっと見れた」
ああ、やっと笑ってくれたね。
貴方の目、青空みたいで好きなのと君は笑って、その小さな手を頬に添え返してくれた。
僕の目が青空なら、君の瞳は深い海の色だ。
────嗚呼見える。
コバルトブルーの海に囲まれた教会で、
君が白いヴェールを風に揺らしている姿が。
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えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます!花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……! (2019年9月22日 16時) (レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです!最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか?私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました!完結、お疲れ様でした! (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......!またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね!ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです!閲覧ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるみ | 作成日時:2019年7月13日 17時