32話 ページ32
その次の日だった。
荘園からの招待状が届いたのは。
まるで全て知られているかのように感じて、畏怖の念を抱いた。
エウリュディケ荘園のことは、国を越えて時々話題にあがっていたため、知らない人は少ない。
ゲームに勝利すれば、大金が貰える。願い事が叶う。どれが本当の情報かは分からないが、荘園に行った者たちはまだ誰も帰ってきていないことは知っている。
なんにせよ、彼女から……この村から離れるための助け舟を出されたのだと感じた。
｢ここへ行って、もっと強力な力を手に入れてきます。そうすればこの村も、あなた達も、もっと豊かになるでしょう｣
引き止める暇も与えぬよう、両親に打ち明けたのは家を出る前日だった。
上手く言葉をつくればすぐに賛成された。
でもAには、なんて言ったらいいんだろう。
｢みんな、食器は気をつけて運ぶのよ？｣
教会を訪ねたのは、荷物を持って家を出た後だった。村の端まで見送りに来てくれるような両親はいない。
開いた窓から聞こえる優しい声。
彼女がいるのを確認してから戸を叩く。
｢イライ！あなたから来てくれるなんて………どうしたの、その荷物？｣
案の定の反応だった。
嬉しそうな笑顔は、自分の姿を見て消えてしまう。
｢……聞いて欲しいんだ｣
そして一人で荘園へ行くことを告げると、ますます顔は暗くなる。
彼女の笑顔を守りたい故にした選択なのに、酷く心が痛い。
｢シスターA、どうしたの？｣
｢っちょっと話があってね、ルーシー小さい子達お願いしてもいいかしら？｣
戻ってこないAを心配して出てきた子どもに、笑顔を返す彼女の声は震えていた。
今にも泣きそうな顔。そう、こうなることは分かっていた。
だから
────これを君に。
｢…………ゆび、わ｣
どうか泣かないでくれ、愛しのA。
もしも本当に願いが叶うなら、この力を失くして君と二人での暮らしを望もう。
｢必ずここへ帰ってくる。だからその時は、｣
僕と結婚してくれないか。
そう言って一人残してきた愛する人。
彼女は一年後、待つ場所を失った。
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えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます！花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです！最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか？私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました！完結、お疲れ様でした！ (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......！またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね！ありがとうございました！ (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです！閲覧ありがとうございました！ (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるみ | 作成日時：2019年7月13日 17時
