1話 ページ1
「何してるの、イライ君」
少し離れた木の陰から少女は顔を出した。
暖かい風が花と草の香りを運び、蒼に散りばめられた雲はゆっくりと身を委ねている。
「びっくりしたな。………本を読んでただけだよ」
「知ってた。見ればわかるもの。
びっくりなんてしてないのも知ってる。来るの分かってたでしょう」
苦笑いを浮かべた自分に対し彼女は楽しそうにくつくつと笑った。
隣に腰を下ろすと、肩に頭を預けてくる。
「イライ、私ね、海のある街に住みたい」
聞き慣れた柔らかい声が胸に響く。
「大人になったら、叶えるよ。必ず」
「…………誓って」
不安げに揺れる瞳をそっと閉じ、瞼にキスをした。
「誓うよ。
いつか二人で、この村を出よう」
お互いの体温が服越しに伝わる。
嗚呼、僕には彼女しかいないんだろう。
抱きしめ合う度にそんなことを考えていた。
「_______痛いよ、相棒。嫉妬してるのかい?」
しわくちゃになった掛け布団に羽を降ろした梟は首を傾げる。
「いや、何でもないよ。起こしてくれてありがとう」
久しぶりに君の夢を見た。
寂しくなるから正直もう見たくはないのだが、無意識にも求めてしまっているのだろう。
「今日も、頑張らなくてはね」
孤独なぬくもりの残ったベットを後にした。
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えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます!花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……! (2019年9月22日 16時) (レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです!最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか?私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました!完結、お疲れ様でした! (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......!またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね!ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです!閲覧ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるみ | 作成日時:2019年7月13日 17時