【イナイレシリーズ】one day【短編集】 (ページ2)

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青い星の救い方【基山タツヤ】ページ2

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　お日さま園の庭では、小学生の子たちが持ち帰ってきた朝顔がツルを伸ばしている。
　私は、涼しい部屋でしばらくそれを眺めていたが、意を決して真っ白な四つ切り画用紙と向き合うことにした。

　――環境問題のポスター。

　クーラーの設定温度は二十二度。こんな部屋で「ＳＴＯＰ！地球温暖化」などと描こうものならお笑いである。ポスターなんぞで環境問題を解決できるなら何枚でも描いてやる。
　頭の中で愚痴を言いながら、私は手に持ったシャーペンをクルクル回した。
　絵を描くのは嫌いではないけれど、アイデアが思い浮かばない。何だかお腹も空いてきたし――お日さま園はラジオ体操を導入しているため、朝ご飯の時間も早く、成長期の私は昼食まで持たない――やる気は紙の上を探しても見つからない。

「ちょっと休憩したら？」

　上から、ソーダ味のアイスが現れた。顔を上げると、視界にタツヤの逆さまの顔が映る。

「朝からずっと悩んでるだろ」
「何にも思い浮かばなくてねー」

　私がアイスを受け取ると、タツヤは私の隣に座り、同じアイスを頬張った。

「タツヤは？もう終わった？」
「俺は昨日終わらせた」
「はーーー……偉いですねぇ」

　私はアイスを一口かじった。すっきりした甘みが口の中に広がる。

「テーマ何にした？」
「海洋ゴミ問題。Aは？」
「地球温暖化にしようと思ってたけど、あんまりにも何も描けないから変えようと思ってたとこ」
「ふうん。俺、Aの絵はあれが好きだな。去年の冬休みに描いてた絵」
「あー、『守ろう自然』のやつ？」

　そのときは、『自然』がテーマと決まっていた。私は画用紙の真ん中に大きな木を描いたのだ。

「うん。木を描いてる人はたくさんいたけど、Aがいちばん上手だった。俺もそうなんだけど、木を描こうとすると、葉っぱを全部同じ色にしちゃうんだよ。でも、Aはいろんな色使ってた。それが綺麗だったから、覚えてる」
「んー……」

　こんなに褒められて何て返せばいい？
　すでに食べ終わっているアイスの棒を噛んでいると、タツヤが「まとめて捨てておくよ」と言ったので、ゴミ捨ては彼に任せた。キッチンへ向かう彼の背を見送り、私はシャーペンを持ち直した。

「……描くか」

　結局、ポスターは「緑を植えよう」という文字とともに、大きな木の下で、子どもが新たな苗を植えている絵を描いた。後日、それが優秀作品に選ばれて表彰されたのはまた別の話でる。