【イナイレシリーズ】one day【短編集】 (ページ1)

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熱愛スクープ【霧野蘭丸】ページ1

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　霧野くんは幼なじみだ。昔は「蘭丸」と呼んでいたけれど、中学生になってから、同級生にからかわれたことがあり、今は霧野くんと呼んでいる。

　何せ、私と霧野くんでは、生きる世界が違ったのだ。片や花形のサッカー部スタメン、片や今日も執筆に追われる新聞部。霧野くんはとびきり美形だけれど、私は地味だ。

　こういうわけだから、学校で霧野くんといると、「どうしてあんなパッとしない人が霧野くんと仲良さそうにしてるわけ？」という視線をひしひしと感じるので、いつからか彼とはあまり喋らなくなっていた。
　別に、仲が悪くなったわけではない。でも、中学生はそういうものなのだ。

「この記事書いたの、Aだろ？」

　ある日の昼休み。外のベンチに座って昼食をとっていると、霧野くんがやってきて紙を見せてきた。
　『雷門サッカー部全国進出』という文字がでかでかと書かれているそれは、何を隠そう新聞部が発行している校内新聞のひとつ、『雷門スポーツ新聞』である。
　霧野くんが示した先には、ディフェンダーの活躍についての記事がある。彼の言う通り、私が書いたところだ。
　しかし、新聞には制作に携わった部員の名前一覧があるものの、誰がどの記事を書いたかまでは書いていない。

「よくわかったね」
「わかるよ。お前のはすぐわかる」

　霧野くんは隣に座り、私が書いた記事をじっと見つめていた。
　一応、文章を書く身として、自分の文章にはそれなり自信があるけれど、目の前でじっくり読まれるのはいたたまれない。横から手を出して新聞を畳ませると、霧野くんは「ああ……」と眉を下げた。

「母さんにも見せたんだけど――」

　霧野くんの言葉に、私は危うくサンドイッチを喉に詰まらせるところだった。

「お母さんに見せたの！？」

　私と霧野くんの家は家族ぐるみの付き合いがあり、霧野くんのお母さんならよく知っている。しかし、新聞が保護者の手に渡るとはあまり考えない。今さらながら、不適切な表現がなかったか心配になってきた。

「喜んでた」
「あ、そう……」ならよかった。
「最近Aちゃんと遊んでないの？って聞かれたよ」
「あ〜……」

　なぜ親という生き物は、子ども同士が永遠に仲良しだと思い込むのだろうか。

「何か、最近喋らなくなっちゃったよな、俺たち」

　しかし、彼があんまりにも悲しそうな顔をするので、私がディフェンダーの記事を書くと立候補した話ぐらいは、してもいいかなと思った。