煉獄家 ページ44
⋅
『おにいちゃん、ぬけだしてよかったの…?』
「いや、良いわけはないんだけど」
後でこっぴどくしのぶに叱られるのが目に見えている。
目覚めて私はまだ2日、おにいちゃんもまだお腹の傷は塞がりきっていない。
そんな中向かう先は、杏寿郎の生家、煉獄家だ。
ヒノカミ神楽について知るべく、杏寿郎に言われた通りにまずは煉獄家に出向いてみることにしたのだ。
ふわ、と見慣れた杏寿郎とそっくりの髪が見える。
玄関の前で掃き掃除をしているのだろう、久しぶりの千寿郎くんの姿に安心して涙が出た。
「…千寿郎…くん?」
「はい、千寿郎は僕ですが…」
久しぶりに見る千寿郎くんの顔色は悪くて、泣き腫らした顔をしていた。
『せんじゅろ…っ!!』
『ごめんなさい、私のせい、わたしが守れなかったから…!』
「Aちゃんのせいじゃありません」
分かっている。私のせいだと言ったところで、私を責めるような人たちはいないことくらい。
それでも責任を感じずにはいられなかった。
「急に押しかけてしまってすみません。
今回の任務での、煉獄杏寿郎さんのことはお聞きでしょうか…
杏寿郎さんからお父上と千寿郎さんへの言葉を預かりましたので…」
一番の目的は、杏寿郎が「死ぬつもりなどさらさらないが、もしものことがあったら」と託された伝言を伝えること。
生き延びたのに自分で伝えるのは恥ずかしい、昔の父に戻ってくれるかもしれない、と言う杏寿郎に代わって煉獄家までやってきたのだ。
「兄から…?兄の容態は伺っていますが…
あの…大丈夫ですか?あなたもAちゃんも、顔が真っ青ですよ」
「やめろ!!どうせくだらないことに決まっている!!
大した才能もないのに剣士になるからだ!!
くだらない…愚かな息子だ杏寿郎は!!」
この人のことか、杏寿郎が言っていたのは。
母親を失った後、父は別人のようになってしまった、と。
そして今、弟の千寿郎に向かっても強く当たっているかもしれない、と。
「人間の能力は生まれた時から決まってる」
「才能のある者は極一部
あとは有象無象
何の価値もない塵芥だ!!」
「杏寿郎もそうだ、大した才能はなかった
生きているのが奇跡だろうな、死んででも不思議じゃなかった。」
もしかしたらこの人は。
誰よりも妻と子供たちを愛していたから。
酒乱になって、こんな風にならなきゃ、生きていられなかったのかもしれない。
「千寿郎!!別に死んだわけじゃないだろう、いつまでもしみったれた顔をするな!!」
だからといって、これが許されるものではない。
⋅
309人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
澪凪(プロフ) - *なのはな*♪さん» なのはなさんはじめまして!コメ返遅くなってしまってすみません(汗)面白いと言って頂けて嬉しいです!!更新速度も不安定になってしまいましたが、無限列車編はこれで完結になります。準備が出来次第、遊郭編も公開していきますのでどうぞよろしくお願いします! (2022年5月2日 10時) (レス) id: 096e1d75b4 (このIDを非表示/違反報告)
*なのはな*♪ - 最近読み始めたのですが、すっごく面白かったです!これからも頑張ってください!お忙しいはずなのに、丁寧にコメ返されていて尊敬です……! (2022年4月14日 21時) (レス) @page48 id: c5d24dd7d0 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - かわあいさん» かわあいさんありがとうございます!いい作品だなんて照れます…笑 これからもどうぞよろしくお願いします!! (2022年2月19日 22時) (レス) id: fd89498da8 (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 今日見始めました!とてもいい作品ですね!次回の更新もお待ちしてます!! (2022年2月18日 2時) (レス) @page44 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - メロン♪さん» ありがとうございます!読みに行かせてもらいますね! (2021年11月21日 11時) (レス) id: bec4918ee4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ