８５話違えた約束 ページ48
また、嫌な夢を見る。
『ちーちゃん！』
蝉の鳴く数が幾分か少なく感じても、照りつける日差しは変わらない。
日差しを遮る木陰の麓にあるベンチで本を読むワタシに、一人の少年が近寄ってきた。
『こっちでみんなと遊ばない？』
そういえばこうやって何度か遊びに誘われてたっけ？
でもそのたび
『………ううん。』
いつも断った。
みんなが思うほど楽しいと感じられなかったから。
誘おうとするみんなの気持ちがわからなかったから。
…一緒に何かをやることが怖かったから。
だから目の前にいる少年"ヒロトくん"がしょげるのをわかっていても、ワタシから進んで頷くことはなかった。
ふと、お日さま園の門の方で誰が『義父さんだ！』と喜ぶ声がする。
だんだんと他の子たちも喜々としてその声がする方へ駆けだしていく。
それは目の前のこの子も同じでー。
『義父さんが！？ちーちゃんも行こ！』
『…あっ』
彼はワタシの手を掴むと、引っ張って立ち上がらせる。
ーが、引き上げられる拍子に読んでいた本が手元からするりと下に落としてしまう。
落としたことにも気づかずに彼はグイグイと義父のところに向かおうとする。
…この日のことは、嫌でも覚えていた。
忘れるわけがない。
義父…あいつが復讐のためにみんなを駒として使い始める、その始まりの日だ。
このあとのことを知ってる私は行きたくなくて、無理矢理足を止めた。
『…どうかした、ちーちゃん？』
掴んだ手を離さないまま、彼はあどけない顔をして振り返る。
仮にここで行っちゃだめ、と言ったとしても、"ヒロトくん"は行っただろう。
わかっている。
"ヒロトくん"にとっての大切なものも、そしてその順番も。私は知ってる。
だから私は噤むことしかできなかった。彼の大切なものを貶したくない。
またあの時のような惨事を起こしたくなくて、自分から手を離そうとしたが、なぜかできなかった。
『えっ…？』
蝉の鳴き声がやけにうるさく感じる。
『約束しただろ？ずっと一緒にいるって。』
戸惑う私に対し、無垢な笑顔で彼は言った。
『大丈夫。…もう離さないから。』
ボソリと彼の口から聞くはずのない言葉を最後に目の前が暗転し、いつの間にか見覚えのある天井に変わる。
…起き上がって、横を見ればすやすやと眠る野坂がいた。
どうやらこっちが現実であってるらしい。
(夢、なんだよね…？)
握られた感覚の残る手の冷たさがやけに現実味を帯びていた。
余談とお知らせ〜時が来ればこのお知らせは消します！→←短編「思い耽る」後
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
