７３話 ページ33
もちろん、私への好意は相変わらずなところが多いが、態度や身に纏う雰囲気がだんだん変わっていった。
よく私にひっついていた彼の腕はほんの少しだけ距離が置かれ、今も手を握ってくるのはよくあるが、人前で腕を組むという密着が多いスキンシップはめっきり減ったし、優等生らしく、ほんの少し…少しだけだけど大人びた物静かな印象が遠目から野坂を見てもわかるようになった。
つまり、野坂は大人へと成長しているのだ。
しかし野坂に限ってあり得ないというのが私の中の結論で、何よりこの小さな変化に私が気づきたくなかった。
目の前の野坂が少しずつ変わっていくように、変わらないものなんて存在しない。
昔の誰かが言ったように世の中は諸行無常だ。
この頃に戻りたいと焦がれても、変わりたくないと願ってもいつかは変化しなくてはならない。
「あれ、レポート終わったの？」
「…ちょっと前にね。」
思い耽っていると、野坂がこちらに気づいて話しかけてきた。
彼が零す言葉に適当な相槌をするつもりが、いつの間にか私から話かけていた。
「…悠馬くんってさ」
「？」
「将来何になりたいの？」
ふいに口から出た後に少しの後悔が燻ったが、まあ、いいかと投げやりになって、その言葉の誤りを訂正はしなかった。
「Aちゃんと結婚。」
「…それ、したいことでなりたいことじゃないでしょ」
私から見る野坂の答えそのものだから、"野坂悠馬らしい夢"といえば、そうかもしれない。
「じゃあ、Aちゃんをめとる？こと」
「…言い換えただけじゃない。」
「将来なりたいこと、なんでしょ？なら間違えてないよ。
僕はAちゃんと結婚したいから、今勉強してるんだ。僕はAちゃん好みの人間になりたいな…。」
平然と言ってのける彼は自信に満ち溢れた声色で言葉を続ける。
「Aちゃんは、落ち着いた物腰の性格で、でもいざとなったら手を引いてくれる面倒見がいい人が好きだよね？
逆に騒がしすぎるのは駄目で…。
あと、頭がよくて要領がいい人で、他人思いの人。
…他には…そうだね。無邪気に笑って、Aちゃんに寄り添ってあげられる。」
私そんな完璧主義者ではないはずなんだが…？
いや、それよりもこれじゃあ、まるで誰かを特定してるような言い方じゃないか。
「僕は"代わり"になるつもりはないよ。…そいつからAちゃんを貰うだけ。」
私の手を包むように握り宣言する野坂はどこか少し壊れた笑みを浮かべていた。
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沙稀乃(プロフ) - 橋本アリィちゃんさん» ありがとうございます！(*´∇｀*)私の頭がポンコツのため、なかなか進みませんが、よろしくお願いします！\( ˙▿˙ )/ (2021年11月5日 0時) (
レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - とても面白かったです！続きを待ってます！(*´ω｀*) (2021年11月3日 20時) (レス) @page40 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - ピータンさん» コメ、ありがとうございます！！凄く面白いと言われて、もう既に心が有頂天になってるんでまともに返信ができませんが、本当に嬉しいです。ありがとうございます！更新のろのろですみません…！ (2020年8月21日 16時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
ピータン(プロフ) - すごく面白いですね！これ野坂君がもっと大きくなったらどうなるんだろう？これからも楽しみにしてます！ (2020年8月21日 11時) (レス) id: d4faf78640 (このIDを非表示/違反報告)
沙稀乃(プロフ) - こさめさん» え！？本当ですか！！ありがとうございます！！コメント本当にありがとうございます！嬉しいです！ (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5e2cd7ca09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙稀乃 | 作成日時：2020年4月12日 12時
