なぜ ページ25
「なっ……！」
倉間は突然右手首に走った強烈な痛みから、思わず拳銃を地面に落とす。
刺さっていたのは、短剣。小型で、しかし切れ味は鋭い。いかにも投げやすそうな形状をした武器。倉間は知る由もないが、それはかつて霧野に与えられていたもの。霧野が使うことはついぞなかったそれが、倉間の凶行に終止符を打つかのように深々と突き刺さっていた。
「痛ッてぇ……！！ クソッ！！」
痛みに表情を歪めながらも、拳銃を拾おうと手を伸ばす。しかし神童の方が早かった。次の瞬間倉間の手は遮られ、拳銃は神童の手に収まっていたのだ。
距離の差もあったというのに圧倒的な反応速度。それがなぜなのか、すぐに倉間は理解した。
「浜野……てめぇ、生きてたのか」
「まーね。しかも無傷☆」
浜野は死んだフリをしながら隙を窺い、倉間が神童に気を取られている間に動いていた。器用な彼は手元にあった短剣を見事命中させた。
神童は浜野が倒れたフリをしたその直後から、彼の策を見越していた。だから倉間の気を浜野から逸らした。
「お前の負けだ、倉間」
そう宣言した神童に、倉間は悔しげに舌打ちをする。せめてもの抵抗で刺さった短剣を抜き構えたが……神童が迷いなく発砲したことで手に被弾し、血が噴き出る。
「ぐぁッ！！」
「………」
痛みで苦しむ倉間を見下ろす神童の目は、底冷えするほどに凍てついていた。出血と激痛によりもはや武器を持つことすら叶わなくなってしまい、倉間は悟る。醜く惨めに生き延びていた自分も、とうとう命運尽きたかと。
「倉間……」
浜野がぽつりと呟く。人殺しと理解しながらもかつて親友だった人間を目の前に、複雑な思いが絡み合う。神童はそんな浜野の気持ちを知りつつ、その小さな声を聞き流した。
復讐の時は来たれり。謝罪も懺悔も命乞いも必要ない。奪い取るのはこいつの命ただひとつ。
「なあ神童」
「……なんだ？ 邪魔はするなよ浜野」
浜野は拳銃を構える神童に、そっと声をかけた。神童は視線を倉間から逸らさずに答える。目を離せば、その隙に何をされるかわからない。
「俺は……絶対に許さない。信助のことも倉間のことも。でも……みんな望んでこうなったわけじゃない。だからこそ、今ここで倉間の気持ちを聞きたいんだよね」
＿＿＿なぜ、殺人鬼を前にして今更そんな言葉を。浜野は甘い。
今生きていられるのは浜野のおかげとわかっていても、神童は彼の意思を尊重しようとは思わなかった。
続く (更新停止中)
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紅蘭 - 続き楽しみにしています！更新頑張ってくださいね！ (2020年5月3日 20時) (
レス) id: c9c79794b0 (このIDを非表示/違反報告)
浜野鶴正 - 更新お願いします (2018年7月28日 1時) (レス) id: 76900bd172 (このIDを非表示/違反報告)
常連客 - 頑張って下さい。面白いですね、○し合いなのにグロ要素が無いという全年齢対象で、とっても良いと思います。浜野防弾チョッキって最強(？)じゃん・・・；； あれ？倉間ってナイフじゃなかったっけ？？・・・・・あ！水鳥のか・・・ｗｗｗ (2015年5月27日 10時) (レス) id: e00034d299 (このIDを非表示/違反報告)
モブ子 - 面白いです！浜野がなにげに生き残りそうです…更新頑張ってください！ (2014年12月14日 15時) (レス) id: 9b39510a3b (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 続きが楽しみです！ (2014年11月14日 22時) (レス) id: 41ef129427 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ココナッツ | 作成日時：2013年5月7日 17時
