【イナズマイレブン】怪傑の奇術師【男主】Ⅱ (ページ19)

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白石は目と体と頭を同時に動かしつつ攻めて行くと、遂にGKの杉森と対面した。

『データにあるものは、もう威力も性能もバレちゃってる。……のであれば、誰も何も知らないやつを出せば良いってことだよな』

「まさか……!」

『そのまさか、だよ』

白石は右足でボールを高く蹴りあげると、一拍置いて自身も飛び上がり空中でオーバーヘッドキックを決めた。その蹴りを受けたボールは青白い光を放ちながら、目で追えないスピードで杉森に向かい、彼のグローブにすら触れることなくネットに当たってフィールドに落ちた。

審判の笛と、歓声が鳴り響く会場で、白石は一度だけ息を吐くと呆然としたままの杉森に目を向ける。真っ直ぐで淀みのない瞳を向けられた杉森は、はっと意識を取り戻して翡翠の髪を揺らす白石を見た。

『データになるだろうから教えてあげる。
今のは“鏡花水月”。君達の目には見えるけど、触れることはできない。

だから言っただろ?』

そこで言葉を切ると、白石は笑顔を浮かべる。
人当たりの良い万人受けの笑顔に見えるが、彼から感じる禍々しい雰囲気のせいで好感を持てるものではなかった。怒りの感情が白石の中に渦巻いているのは、一目瞭然。

『＿＿＿本番、覚えとけってね』

それだけを吐き捨てるように言った白石は、何も言わない杉森に背を向けて守備の配置に駆け足で戻っていく。
杉森はネットから転がってきたボールを持ち上げると、遠のいていく白石の背中を眺めた。

「(あれが怪傑の奇術師……)」

仲間にも言わずに、今まで公表せずにいた必殺技を惜しみなく出してきた白石。

やはり彼は侮るべきではない。
侮るべきでは無いと同時に、敬わなければいけない存在であると再認識した。

何故なら彼は＿＿＿＿味方に居れば心強いが、敵に回すと恐ろしくおぞましいと言われるほどのサッカープレイヤーである＿白石Aなのだから。