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コンコンコン
ノックを3回鳴らし、先生を呼ぶ
名前を告げると、驚いた声で先生が返事をした
柊「A…なんで…?」
相変わらず私の視線は先生の足元
「先生…も…怪我してたので…
一応治療、手伝ったほうがいいかなって…」
柊「…優しいな、お前は」
失礼しますと小さく呟き、キョロキョロと中を見渡す
柊「悪い、そこに救急箱があるんだ
取ってくれるか?」
「は、はい…」
中から包帯や消毒液を取り出し、先生を手当てする
柊「…うまいな、A」
「え…初めてです…」
柊「器用だもんな」
「い、いえ…そんなことは…」
沈黙
距離は近いけれど、私の視線は先生の頭にしか向いていない
「先生…どうして…私に…優しくしてくれたんですか…?」
…これは、ずっと気になっていたことだった
なんで…私なんかを…?
柊「俺は景山に “ お前のことを頼む ” って言われたんだ」
景山さんが…?先生に…?
柊「 “ いつも抱え込んでて、儚くて、消えちゃいそうで…
でも、誰よりも他人のことを考えられる
不安なんです、私
いつか、Aが本当に消えるんじゃないかって ”
“ 先生、Aを助けてあげてください ”
こう景山は言ってたぞ」
「そう…ですか…」
知らなかった…
でも…私も不安だった
その不安は現実になってしまったけれど…
柊「…俺もお前が消えそうで怖い」
ためらうような口調で、でも迷いなく先生が言い切った
はっとして先生を見つめる
柊「やっと目が合ったな」
「あ…すみません…」
ふわりと優しく、私がよく知る笑い方で先生は笑った
少しほっとする
柊「…ありがとな、A
そろそろ教室に戻れ」
「…はい、失礼します」
軽く頭を下げて、美術室から出ようとした
柊「A!」
名前を呼ばれ、振り返る
「…はい、なんですか…?」
柊「お前は…優しいけれど、脆い
そのことをちゃんとわかっておけ
…無理をすると、壊れるぞ」
前までの先生に戻ったみたいで
なんだか少し嬉しくて
ふにゃりと下手な笑顔が勝手に溢れた
「…はい、努力します」
柊「…あぁ、いい顔だ」
私は静かに扉を閉めた
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sei(プロフ) - 楽しんで読ませてもらってます!私にもその文才欲しいくらいです。・゜゜(ノД`) (2019年3月21日 17時) (レス) id: cd07a6348c (このIDを非表示/違反報告)
バボちゃん(プロフ) - 諸行無常系女子さん» ありがとうございます!頑張りますね( ̄^ ̄)ゞ (2019年3月18日 18時) (レス) id: f818c9f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
諸行無常系女子 - 楽しく読ませてもらってます!これからも頑張ってください(*^o^*) (2019年3月18日 14時) (レス) id: 30d23c8fcb (このIDを非表示/違反報告)
バボちゃん(プロフ) - ラビットさん» ありがとうございます!ラビットさんのお言葉、とっても励みになります! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f818c9f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
ラビット(プロフ) - ものすごく面白くて続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年3月17日 19時) (レス) id: 80ad6ef553 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バボちゃん | 作成日時:2019年3月14日 20時