【A3!】天才ちゃんの化けの皮。2nd

#55 ページ8

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Tsukioka side.






「…あ、由井さん。ここ間違えてるよ。」




『す…すみません…！』






冬組の稽古が終わった後は、2人で勉強をする。これが最近の習慣になってきた。





土井さんが、由井さんは天才じゃいって言ってたけど…器用な子ではあるから飲み込みは恐ろしく早かった。
無理をしてる感じはすごくしてるけどね。







「…そろそろ終わろうか？もう遅いし。」





『そうですね…。毎度毎度すみません、付き合ってもらっちゃって…。』




「ううん、稽古見てもらってるんだしこれくらいなんてことないよ。」






俺がそういうと、由井さんはふわりと笑った。
そして、さらふわな髪の毛を耳にかける。





そのときふんわり、
華やかだけど柔和な、優しいすずらんの香りがした。






「ねぇ、前々から思ってたんだけど…由井さんってすずらんが好きなのかな？」





『え？』






俺の藪から棒な質問にきょとんとする由井さん。
…この前、この顔ドラマで見た…！







「いや、いつもすずらんの香りの香水つけてるから…。
しかも、甘めというよりはすずらん本来の香りが強いもの使ってるみたいだから…！」






『あっ、なるほど…！


えぇ、すずらん好きなんですよ。私。
…まぁ、すずらんが好きというよりは…お守りみたいな。』






「お守り？」







俺が尋ねると、由井さんは髪の毛を指先で弄りながら答えた。






『…すずらんの花言葉って、ご存知ですか？私、それがすごく好きで…。


お母さんに無理言って、オーダーメイドで作ってもらったんです。』





「お母さん？」





『私の両親、化粧品ブランドの社長なんです。メディアには公開してないんですけど…。
それで、香水とかも手掛けてるので。』




「そうなんだ…。」





由井さんは、そこまで言うと荷物を抱えた。
そして立ち上がる。






『…それじゃ、もう遅いので私はここで失礼します。今夜もありがとうございました！』







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由井さんが部屋に戻ってから、俺は花言葉の本をめくっていた。
もちろん、すずらんの花言葉を見るため。




俺が知ってるすずらんの花言葉は、"謙遜"とか、"愛らしさ"とか、"純粋"。
けど、これらを由井さんが好きだと思っているとは考えられなくて。






「…、あった。」






ずずらんのページで指をとめ、文字に目を走らせた。







「…これだ、



"再び訪れる幸せ"…。」






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