【A3!】天才ちゃんの化けの皮。2nd

#80 ページ34

.




「綴出てこないなぁ…。」





「毎度毎度だけど…心配ですよね。」






みんなよりちょっと遅めの晩御飯を食べ終わったあたりで、伏見さんと佐久間くんが話している内容が聞こえた。






今はちょうど、春組の第2公演の台本を書いている最中で。






『皆木さん、どうかしたんですか？』





「あっ、由井さんは初めてだもんな？

綴は、執筆し始めたら完成するまで執筆しかしないんだよ。
飯も食わず睡眠も取らず…。

辞めた方がいいって言ってるんだけど、本人がこれがいちばんいいって。」






『そうなんですか…。』






「これから飯持っていくんだけど…声をかけたことにも気がつかないからなぁ…。」






そう言いながら、伏見さんは野菜スープとサンドイッチをトレンチに載せる。






『私が行きましょうか？』





「えっ」







:::







『皆木さーん…失礼します…』





ノックをして部屋に入る。
目に入ってくるのは、真っ暗な中にぼうっと光っているパソコンのディスプレイ。





その前に座る皆木さんは、うとうとしているようで体が揺れていた。






私が皆木さんのところに来たのは、純粋に心配だったから。
皆木さん、他の人の世話はしてるけど自分のことには無頓着なイメージあるし。
一心不乱に無理しちゃうのは私も一緒だけどね。







『皆木さん。』





後ろから声をかけても反応はなし。
とりあえずテーブルにトレンチを置いて、皆木さんのイスの隣に膝立ちする。
そして、顔を覗き込んだ。
…隈ひどいなぁ。顔色もわるいし。







『み、な、ぎ、さーん』







顔はぴくりとも動かない。
これもダメか…なんて思っていると、おもむろに私の頭に手を乗せて来た。
そして少し雑に、でもやさしく頭を叩かれる。






「にいちゃん今忙しいから…あっち行ってな。あとで遊んでやるから…。」






《お兄ちゃん、ボクもう待てない…。ちょっとでいいから遊ぼ…？》






「…っ、え"？！」






次の瞬間、私の頭からバッと手を引いて真っ赤な顔で身を反らせた皆木さん。







「ゆ、ゆゆゆ由井さん？！」





『あはは、お疲れ様です皆木さん。』





「何してんの？！」





『珍しい皆木さんが見られたので…つい？』





「〜〜〜〜っ！由井さんたまにおちゃめ出るよな…。
そして声優の本気怖い…」






『はは、さあ…ごはん食べてください？』





「っす。ありがと、由井さん。」







.

#81#Noel#様リク→←#79

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す