【A3!】天才ちゃんの化けの皮。2nd

#58 ページ12

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『十座さん、どうですか？』





「ん…うめェ…。」






稽古が終わった後、私は十座さんとケーキを食べていた。
新宿に新しいホテルができて…イベントでそこへ行くこととがあったから買ってきたのだ。






最近は、瑠璃川くんや向坂くんの後輩組に食べ物を買ってくることが多かったんだけど…やっぱりダントツで多いのは十座さんだった。







いちばん喜んでくれるし。









「なぁ。」






『何ですか？』





「…いつまでその敬語続けるつもりだ。」





『え…』








ショートケーキの上に乗ったいちごを頬張りながら、十座さんは私の方をみる。






私が十座さんに対して敬語を使っていたのは、なんだか昔の癖が抜けないっていうのが大きかった。
同い年ではあるんだけど、やっぱり助けてもらった側としては。







何も喋らない私を、十座さんはじっと見つめる。
…真っ直ぐな目だなぁと、いつも思う。









『…助けてもらったので、ちょっと自分的に…。』







「あ？…まだあん時のこと気にしてんのか。
…それに、今だってすげぇ高いケーキとか買ってくるだろうが。それで十分だろ。」







『ケーキを買ってくるのは…そういうんじゃないです。
十座さんが喜んでくれるから、それで…。』







「…そうかよ。」








釈然としないまま俯く。
すると、頭の上にガシッと手を乗せられた。





突然の十座さんの行動に、びっくりして顔をあげる。







「…なんて言っていいのかわかんねぇけど…。



敬語じゃなくて、タメ語で話してくれた方が…なんつーか、良いだろ。
その…。」






『？』







十座さんが恥ずかしそうに頭をかく。
よく見たら、耳もちょっとぴんく…？





ちょっと待っていたら、ぼそりと呟いた。








「…、…ろ。」






『？？？』







「あーーー、だから…。ダチみてぇだろうが。」







『えっ…？！』







言い終わると、十座さんは恥ずかしそうに顔をうつむかせてモンブランに噛り付いた。
私はというと、まさに放心状態で。








『友だち…、私と十座さんが…友だち…。』






「…嫌だったか。」






『そ、そんなわけないです！…ただ、私…友だちっていえる友だちがいたことなくて…。
なんて言うか、不思議な感じで…。』







すると、十座さんはフッと笑ってケーキを食べる。






「…摂津はダチじゃねぇから…俺もダチはお前が初めてかもしれねぇ。」








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