【A3!】天才ちゃんの化けの皮。2nd

#49 ページ2

.





Tsukioka side.





由井さんは毎日毎日、すごく疲れて帰ってくる。
俺たちの練習を見てくれる日は必ず9時までに帰ってきてそのまま稽古。
それがない日は11時ごろ帰ってくる。





尚、その後に絶対自分の練習をしているから本当に尊敬しかない。
なのに、テレビや雑誌で見る由井さんは疲れた顔なんてまっっったくそんなこと連想させないほどきらきらしていた。







…だから、俺は今この状況に少なからず動揺していた。







『月岡さん…おねがいします…！！』





「由井さん、主語！！」







稽古がない日、由井さんは仕事から帰ってくるや否や俺の元にやってきた。
まずここの段階でびっくりした。(最近は監督と仲よかったから…)








「Aちゃんどうしたの？！大丈夫？！顔なんて真っ青だけど…」





「…監督、俺のことも心配して…」





「真澄今は黙ってて！」







監督の言う通り由井さんの顔は真っ青で、今まで見たことないくらい疲弊していた。
そして鞄から見えていたのは…






「…数学の参考書？」





『っ！！』







咄嗟に口に出してしまった言葉に、由井さんが肩をびくりと震わせる。
…あ、なんだかわかったかもしれない。





俺は由井さんの考えていることがなんとなくわかって、頭を撫でた。







「大丈夫だよ、由井さん。俺の部屋行こうか？」







:::






俺の部屋の部屋でおとなしく座っている由井さんは、なんだか罰の悪そうな顔をしていた。






『すみません月岡さん…こんな情けない姿を…！！』






「いや、気にしないで？元はと言えば、俺たちの練習見てくれてて勉強する時間が減ったせいだから…。」






『いえ…私ができないから…！』







由井さんが俺にして欲しかったこと。
それは、数学の家庭教師だった。





由井さんによると、由井さんはもともと数学が苦手で…今までのテストはなんとか1位をキープしてたけど今回は危ういらしく勉強を教えて欲しいとのことだった。
学年1位をキープってすごいな…。





申し訳なさそうにわからないところを説明する由井さんを見て、土井さんの話を思い出した。







"由井さんは天才じゃない。"
"努力しているところを他の人には見せない。"







『月岡さん？どうかされました？』






「えっ、…いや、なんでもない。」







自然と口角が上がる。





由井さんが俺を頼ってくれたことが限りなく嬉しかったから。。







.

#50→←#48

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す