✿大奥に咲く七輪の華✿

✿92 ページ46

「お前が玉森裕太？」

6年前の桜が舞う暖かな日。

声をかけてきたのは薄汚い服を着た
俺より少し大人びた男だった。


『‥‥誰？』

「俺？お前の兄貴。」

あー、親父は違うけど(笑)と男は笑う。



急に俺の前に現れた男は蘭と名乗った。

どこから俺の名を知ったのか。

小綺麗な格好をしている俺を見て

大事に育てられてるんだな。と呟いた。



父上は？と聞いたら死んだ。と答えた。

母上は？と聞いたらあのお城の中。

と、江戸城を指差した。



「お互い色狂いの母親に産み落とされた哀れなガキだな」と笑う。

俺達は何でお城に入れないの？と聞いたら

「だって俺達いらないガキだもん。」

と蘭はお城を見つめながら答えた。



母上は、町民の父上との間に俺をもうけ、

その3年前にそこらへんで呑み潰れていた男との間に
蘭をもうけたらしい。

母上は上様でありながら好みの男を見つけると
まるで野良猫のようにフラフラとついていく、
色狂いのおなごだったのだ。

✿93→←✿91

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す