171:ギャルと”する” ページ21
「悟が来てくれなきゃ私は冷静にもなれなかった。多分、答えを出す前に殺しに行ってたね」
僕はその言葉を聞いて、自分の首筋を撫でた。
よくもアンタ恥ずかしげもなく本人の前で言えるな
「僕は何もしてませんけど…」
というか、僕こそ殺しに行こうとしてたっつーの。
「アンタが来なきゃ、自分に憑いてる呪霊に魂売ってまで復讐しようとしてたって。立派に一人助けてんじゃん、胸張れよ後輩」
Aは、しゃがんだままの僕の頭をわしわしと撫でた。
Aの顔はもう幾分か元気そうだった。
しっかりと、過去に折り合いをつけてきたようだ。
Aが強い意味がよく分かる。
Aは強いよ。本当に。
だから僕はAが好きだし正直尊敬してる。
アンタみたいな人、この世界には勿体無さすぎるよ。
「先輩には敵わないなぁ。僕って、最強の名で通ってるんだけど」
少しだけ笑いながら言うと、Aは「何言ってんの」と笑った。
そして、僕の手を取るとAは自分の頬に当てさせた。
湿布の上から、Aの頬の温度を感じる。
Aは僕をしっかりと見据えながら言った。
「悟が隣に居てくれるから、私で居られるんだよ。居ないと結構、寂しいんだから」
ざわ、文字通り心臓の奥がざわついた。
血液が急激に巡り、体が自然と動く。
頭なんてまともに回らなくて、ダメだと思うのに全く制御が効かない。
僕の頭はこんなにもバカになっちまったのかよ。
身を乗り出して、ソファーの背に片手をつき、頬に添えられた片手で優しくAの顔を固定する。
顔を近づけて、額をこつんと合わせた。
鼻先が掠れる。
また焦ってるな僕。
確信が欲しいからって、先走りすぎだろ。
衝動に身を任せする程、僕も愚かじゃない。
すでに二度目の過ちをしている訳だが、今ここで止めればまだ間に合う。
危ない橋を渡って一瞬で壊す方が、Aの事に関しては酷だ。
今は____
Aから離れようとする。
まだ____、
「しないの?」
息が止まった。
聞き間違える馬鹿じゃない。
それでも、この言葉ばかりは聞き間違いかと疑ってしまう。
今の、Aの言葉?
Aを見ると、こちらを静かにじっと見ているだけだった。
疑いも、怯えも、拒絶もない瞳。
あぁ、言ったな
A、言ったな
もう待てなんて聞かねーからな
「する」
次の呼吸を待つ事なく、僕はそのまま唇を押し当てた。
だいぶ感情がぐちゃぐちゃだったが、もうどうでも良かった。
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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時