【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

148：ギャルと後悔 ページ48

＿＿＿＿。


その日、Aは伊地知に厳かに呼び出された。

悠仁が高専に帰宅し、Aは何となく家に帰るのも面倒で応接室で一夜を過ごしていた時だった。

夜蛾に「応接室は寝泊まりする場所じゃない。帰れ」と怒られたが、例の如く駄々を捏ねると許して貰えた。
流石、夜蛾ちゃんは私の第二の親だよ。なんて言葉を付け加え。

そんな中、伊地知は早朝に応接室へやってきたのだ。

伊地知の顔を見て、Aは只事ではない何かが起こったのだと瞬時に感じ取った。


聞かされたのは、吉野順平の母親が呪霊により殺害されたということ。
そして、そこには宿儺の副左腕小指が置かれていたということ。


悠仁にはまだ聞かせていない。

Aと伊地知の話し合いにより、悠仁へ伝えるのはまだ先の方がいいと判断が下った。




Aは、伊地知が居なくなった応接室のソファーに寝そべる。
だらりと垂れた腕から、携帯が零れ落ちた。

あの日の、少年を…吉野順平を助けた日の、彼の顔が鮮明になっていく。

｢順平、Aの事覚えてたよ！｣と、悠仁が言っていたのを思い出した。
私も、覚えてるよ。
君の顔を写真で見た時、全部思い出したよ。


少年は、母親を無慈悲に失うことになり何を思っているだろう。

重なる。

“傑”を、なんの前触れもなく無慈悲に失った日と重なる。


Aは腕で両目を覆った。


彼が離反したあの日、彼は顔を見せにすら来てくれなかった。
いつものように普通に任務へ出て行って、それから自分の元に戻ってきてくれる事は無かった。
なんの前触れも、なかった。


あんなの、死んだも同然だった。


ふと、Aは起き上がり部屋を見回した。
自分一人の応接室は広く、空虚で、虚しい。


そうか…、いつも居るから気づかなかった。


Aは自身の隣、ソファーの布をゆっくり撫でた。


彼が居るのがあたり前になっていた。
居て欲しい時、彼は気づくとそこに居る。
言葉は特にかけず、黙ってそばに居る。


隣に居ないって、こんなにも辛いのか。


Aはソファーに倒れ込む。



｢どうしたらいいのか分かんないね、悟｣









翌日、Aはバイクを走らせた。


走らせる数分前、真希に呪具の稽古をつけている最中伊地知が息を切らして現れたのだ。

伊地知の顔を見て、Aは即座に吉野順平についてなのだと察し、別の場へ移動すると彼から話を聞いた。


｢虎杖君を、止められませんでした…ッ｣

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