【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

144：ギャルと罪深い ページ44

「アイツが電話かけてきた時、ちょっと嬉しかったんだよね」

なんだ、じゃああの時少し微笑んだのは自覚があったのか、と七海は思う。

「嫌われたくないって言われて、この辺きゅぅぅってなって、あー今すぐ悟の顔が見たいなぁって」

この辺。
Aは胸の辺りを指す。

「貴方って、妙なところで頭悪いですよね」

「喧嘩売ってんのか、七海」

売ってませんけど、七海は付け足しながら置きっぱなしだったジャケットを持つ。

「その感情、前はなかったんですか？」

尋ねると、Aは唸りながら「…多分？」と返した。

「いやなんか、最近私さぁ悟に対して絶対可笑しいんだよね。何が、とかは分かんないんだけど」

ま、恋人のフリに体がついていけてないんでしょ！
Aは他人事のように笑うと、帰ろうぜ〜と男子トイレから出ていく。


ここまで答えが出ていて、本当に分かってないんだろうか。


七海は出ていくAの背を眺める。


本当は、もうとっくの昔に気付いているのに
気付いてないフリをしているのでは？


七海はジャケット片手に、Aの後を追った。




「Aさん、貴方って実は臆病ですよね」

「え…っと、ホラー映画とかは、嫌いですけど…？」






＿＿＿＿。


ソファーの背にずるずると凭れ、長い足をだらりと投げ出す。

ここが出張先のホテルで、一人で、本当に良かった。

五条は、真っ赤になった顔を両手で抑えた。


あっつい湯に浸からされたかと思えば、ぬるま湯に変わって、気持ちがいいからそのまま浸かっていたらのぼせた。
そんな気分だ。


遠い出張先で、Aの顔も見れない。
携帯のフォルダーに沢山写真があるけど、それでも満たされない時がある。

前は、もう少し我慢できたはずだぞ僕。

Aが長期で海外に行ってようが、フラフラしてようが、ここまで顔が見たくて会いたくて死にそうなほど苦しい時はなかった。


「結構上手くいかないもんだな」


恋人という口実をでっち上げてしまえば、そこからは早いと思ったが思い描く以上に難しいみたいだ。


別に、僕ならやろうと思えば出来る。
閉じ込めて、縛って、手足切り落として、どこにも逃げられなくして、僕を見てって好きって言ってって。
でも、そんなんになったAなんて、僕は多分好きじゃない。いや、絶対。


「あー…」


天井を見上げて、額を抑える。


確信が欲しい。
確信して、安心して。


Aの全部が欲しい。



「焦ってんなぁ、僕」

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