【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

142：ギャルと裏をかく ページ42

それでも、Aは満更でも無さそうに口元を緩めている。
七海はその表情に気づき、ほうと声に出すでもなく思った。

『…そっか。そう、だよな。確かに。怪我は？』

「してないよ」

通話をスピーカーに変え、返答しながらAは応急処置道具をしまう。

『とか言っちゃって、先輩って僕を心配させないように嘘つくからなぁ〜』

探るような五条の声音に、Aはムッとした顔で携帯に目を向けた。

「ふぅん、お前の中で私はそんなに信用がないか」

きっと、通話口の向こうで五条はツーンとした顔をし、シラを切っている事だろう。
見兼ねた七海は「本当にしてないですよ。虎杖君と無傷の約束をしていたので」と返してやった。

『悠仁と？なるほど、先輩の嘘特効薬は悠仁だったか』

「ちょっと、私が嘘ばっかついてるみたいじゃんか」

後で覚えとけ後輩、と脅しをぶつけるA。
見慣れた先輩同士のやりとりに、七海は若干安心してしまう。
生きてるな、自分。

『ま、冗談はさて置き、』

五条が切り出した。

『知ってたんだけどね、先輩が無傷だってのは。どうせ、先輩は怪我しても言ってくれないだろうし、七海も先輩側だろ？そういう事もあろうかと、伊地知を事前に脅しといたんだ』

なるほど、七海は思う。
通りで、先ほど伊地知に連絡入れた際「ところで、Aさんは無事ですか？」と聞かれたのか。
可笑しくもない問いだったが、裏には五条が居たとは。

「パワハラも大概にしておくように」

七海が言う。

『だから、情報筒抜けってこと！いやぁ、僕も仕事が早いね』

「…今度伊地知を労る会を開いたげよ」

Aはどっと疲れたような顔をして言った。
早急にガス抜きをしてやった方がいいと七海も思う。
伊地知が倒れでもしたら、大変なのは案外呪術師の方だ。彼は、呪術師以上にある意味有能なのだから。

「っつーか、伊地知に脅しかけるぐらいなら素直に私に連絡寄越しなよ。もしくは、私に怪我すんなって脅しかけな」

呆れた様子でAが言うと、突然五条は通話口の向こうで歯切れが悪くなった。

『だって…』

突然どうしたんだ、と七海とAは顔を見合わせた。

「だって何よ。…どうしたの、悟？」

Aがこういう時に呼ぶ”悟”の声音は、まるで姉を連想させる。
急かせれた五条は、やはり歯切れが悪そうだった。

『あんまり過保護だと…ウザいかなって。……信頼してないみたいでしょ。………嫌われたくないし』

Aはその言葉に目を丸くする。

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