459:ギャルと激闘 ページ9
頬から出た血は、Aさんの避けた軌道に合わせて弧を描く。
男の顔に、その血が付着する。
それでも男は止まらない。
すぐさま体を捻り、游雲を片手で回して持ち直す。
Aさんも、分かっていたかのように体を翻した。
同時、俺は息を呑んだ。
「う゛、ぐッッ…!!!」
鮮血が噴き出る。
Aさんの腕に、游雲が刺さる。
「まさか...、」
まさか、片腕を犠牲に間合いを詰めたのか...!?
満身創痍、一か八かの滅茶苦茶な行為を前に呆気に取られる。
そして、俺の予想は最悪にも的中して、Aさんは深く刺さっていく片腕を犠牲に男との間合いを目にも止まらぬ速さで詰めると、そのままその腕で胸ぐらを掴んだ。
力を入れたのも相まって、傷口からは赤黒い血液が游雲を伝い流れ出す。
思いたくないが、あんなの絶対神経まで到達しているはずだ。
まだ傷を負っていない片手を拳に握り変え、鋭い一発を男の顎にぶち当てる。
「間違いなく当てた...!」
あんなのをまともに顎に食らって立ってられる奴はいない。
脳震盪を起こして終いだ。
一歩、俺はその時自然に片足を出していた。
すぐにAさんに駆け寄ろうと思ったからだ。
あの人の傷の方が重症だ。
男は、游雲を持ったまま、ぐらりと傾いた。
まるで、首のまだ座らない赤子のように。
力が抜けていくのが分かる。
目の焦点が合っていない。意識が飛びそうになっている。
だがしかし。
「...!?」
Aさんの目が見開かれた。
俺が気づくよりも早く、Aさんは男の異変を目で捉えていたんだ。
Aさんの視線の先で、男の目の焦点がぐるりとAさんに合わせられた。
同時、游雲を持つ手に今一度力が籠ったかと思えば、そのまま力任せに游雲を引き抜いたのだ。
血飛沫がスプリンクラーのように溢れ出し、その瞬間に一瞬の沈黙があった。
激痛が駆け抜ける数秒前の事だった。
そして、男はAさんの叫び声を確認する暇さえも残さず、Aさんの首根っこを掴みあげると彼女の腹部に膝を一発ぶち込んだ。
「...か、ッ」
息を吐き出す間もなく、男は自身の膝の上でくの字に弾んだAさんの胸ぐらを掴む。
「Aさん...ッ!!」
俺の声が届く頃には、Aさんはもう鉄骨作りの建物の壁へと投げられたあとであった。
戦慄。
その二文字が俺の頭を埋めた。
Aさんが、俺のすぐ横でしゃくり上げるような呼吸をしながら、蹲っている。
一歩出した片足が、行き場もなく彷徨っていた。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時