495:ギャルと信頼関係 ページ45
宿儺の言葉の後、瞬きなどままならぬ間に体がぐんっと引っ張られた。
腹部に回された腕。
後、作業的な手つきと音速を超えたスピードで、気を失った伏黒もAと同じように回収すると宿儺は満を持して跳ねた。
それはまるで、テレポートであった。
瞬間移動は、本当は高速で動いているだけなのかもしれない。
宿儺の力を持ってすれば、そうだろうなと頷いてもなんら可笑しくない速度だった。
「舌を噛み切るなよ?暫くは治してやれんからな」
そう宿儺の言葉が耳に入ってきたが、Aには頷く時間なんてなかった。
夜蛾と硝子が現状を把握するのに有した時間は、そう長いものではなかった。
たった一瞬、ものの数秒の間の間に目の前に伏黒が現れたのだ。
建造物の壁に凭れ、気を失っている伏黒が。
救護場で待機していた二人は、すぐさまハッとして彼の名を呼んだ。
彼は起きない。
一体、渋谷では何が起こっているんだ。
「…学長、」
隣で硝子が小さな声で夜蛾を呼ぶ。
夜蛾は彼女の顔を見ただけで、何を言わんとしているのかを察した。
伏黒が来る一瞬の間の中で、起こっていた出来事。
虎杖、いや宿儺か。
彼が伏黒を置いていく様が見えた。
だが、それだけじゃない。
その光景の渦中には、Aも居たのだ。
そのAと、あの一瞬の中で目が合った。
一年の時から変わらない、生意気で眩しすぎる緑色と。
「夜蛾ちゃんッ!!」
そう呼んだAの声が耳に残っている。
アイツは俺に助けを求めない。
一年の時から、生意気に俺には絶対助けてと言わないのだ。
本当に、憎たらしいほどに。
どんなに追い込まれていても、俺の顔を見ると女がする様な顔じゃないというぐらい好戦的な表情を顔に浮かばせる。
アイツはよく言う。
夜蛾ちゃんは、私が負けるとこ想像出来んのかよ。と。
夜蛾は分かっている。
Aが自身の名を呼んだのは、助けを求めたんじゃないと。
私は問題ないから、他を頼む。
そういう意味だと。
「…はぁ、」
夜蛾は、息をつき組んでいた両手に額をくっ付ける。
頼むぞA。
なんて言わない。
アイツは、俺が頼まずとも自分勝手に解決する。
最後の最後まで問題児な奴なんだ。
「全く、」
宿儺を前にしても、あの心の持ちよう。
「憎たらしい程に頼もしい奴だよ、アイツは…」
そう呟く夜蛾。
そんな夜蛾の肩に、硝子の手が優しく載った。
夜蛾の祈るように組んだ両手が震えていたのを、硝子は見ないフリをした。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時