048:以暴易暴 ページ48
____。
私のアホ。
Aは思った。
「おいおい、A〜もう終わりかぁ?」
地面に這いつくばり、近づいてくる甚爾を見上げた。
至極楽しそうに瞳に弧を描かせ、口の端を親指の腹で拭う。
傷を拭った訳ではなく、土埃だ。
「俺は優しいからなぁ、稽古沢山つけてやりてぇんだよ」
甚爾は、箒の柄をくるくると回しながら言う。
甚爾の体は相変わらず無傷。
対するAは、立ち上がるのに時間がかかる程傷だらけであった。
例の呪具、桐壺と夢浮橋を使い稽古が始まるのかと思えば、甚爾は「初っ端からあんなの使うわけねぇだろ」とあっさり却下された。
使いたい使いたいとAは駄々を捏ねたものの、甚爾の言い分を聞いて納得したのだ。
「お前がアレ使って、消し飛んだら稽古付けられねぇだろ。俺もお前も」
Aはその言葉を聞いて、思わず「オッサン…今日めちゃくちゃ優しいな…」と零したのだ。
それが、トリガーだった。
甚爾はその言葉を聞いて、先程からやたら「優しいから」を理由に痛めつけてくる。
気づくべきだった。
甚爾という男に隙を見せるという事は、嬉しがって痛めつけられる事なのだと。
マジで性格最悪だ。
Aは口の中で呟く。
Aは腕を引き摺りながら、横に転がる自身の箒の柄を握る。
「近接はちと上手くなってきたと思ったんだがなぁ…」
甚爾は欠伸をする。
「呪具はからっきしだったか」
途端、Aは勢いよく立ち上がり、油断する甚爾へと振るった。
顔面直撃、やった。
思った矢先、甚爾は人間業とは思えない身のこなしで避け、そして箒の柄を後ろ手で持ち直したかと思えばそのままAを殴った。
首から頬にかけて、平手打ちよりも痛い。
Aは反動で飛び、地面に投げ出され暫く転がった。
「はぁ、は、」
呼吸を整えながら、Aは這いずるように起き上がる。
しかし、上手く立つ事は出来ずに、ぺたんと地に尻餅をついてしまった。
「あーあー、」
甚爾がこちらを見ながら、何やら呆れたように声を上げている。
Aは眉を顰め、不機嫌に「なんだよ」と返した。
「なんだよじゃねーよ」
世話が焼けんな、甚爾は付け足すとAの前でしゃがんだ。
そして、親指の腹でAの鼻下を拭ってやった。
「鼻血出てんぞ」
「マジィ!!?」
Aは急いで鼻下を拭ってみる。
手の甲には、血を引き摺ったような跡がついていた。
「うわぁ、ダッセ…」
「別にダサかねーだろ。鼻血ぐらい誰でも流す」
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時