043:一服失敗 ページ43
オッサンは片眉をあげ言ったあと、私へ「ほら、吸い込んでみろ」と急かした。
すぅ、と吸い込んでみると、瞬間的に煙は肺の中で四方八方に蠢き思わず咳き込む。
ぶわっと吐き出された煙に、オッサンはゲラゲラと笑った。
「...絶対予想してただろ」
なんだか喉がイガイガすると思いながら、きっと睨んでやるとオッサンはニタニタと笑って「上手く吸えると思ったんだがなぁ」と態とらしく返してきた。
本当はもう吸いたくなんて無かったけど、ここで辞めるのは負けた気がするのでなんとか吸い続ける事にした。
何が悲しくてこんなもの吸わなきゃいけないんだ。
やけに美味そうに隣で吸われるのが、余計に腹立たしい。
ふと、ポケットの中で携帯が音を上げた。
メールの音。
吉祥からだ。
確認もせずに確信する。
吉祥は律儀な奴で、しっかりと丁寧に返信をしてくれるのだ。
それも、毎日あの猫の写真を載せて。
るんるんとした気分でストラップがジャラジャラ着いた携帯を開ける。
「男かぁ?」
「見んなよ。友達だっつーの」
「お前友達なんて居たのか」
「言っとくけど、オッサンよりは友達多いぜ私」
言いながら、器用にAは携帯を操作する。
やっぱり吉祥で、今日も猫の写真を載せてくれた。
足も徐々に回復の傾向らしく、吉祥はそろそろ里親を探すべきかと考えているらしい。
「オッサンさぁ、猫の世話とか出来る?」
「ガキの世話もロクに出来ねぇから無理」
「即答かよ。っつーか、待てよ。ガキいんの!!?」
今の話の流れだと、オッサンには子供が居ることになる。
ちょっと待ってよ、そんな話知らなかったんだけど。
っつーか、ここで何してんだよガキと遊んでやれよ!!
だが、オッサンは表情一つ変えず首を捻った。
「さぁ、どうだったかねぇ。忘れた」
知らない女に孕ませた子供じゃないだろうな…と疑惑の目を向けたが、オッサンはしらーっとした顔で煙草を吸い続けていた。
オッサンの顔を見ても、いまいちそれが嘘なのか本当なのか分からず聞くのを辞めた。
オッサンは適当なので、時折嘘と本当の話をごちゃ混ぜにして話す。
だから、嘘の可能性も無いとは言いきれない。
「そうだ、A」
オッサンが突然私の名前を呼んだ。
ポチポチと素早い手つきでキーを操作し、私はオッサンに目も向けず「なに」と返事をする。
これも何時もの事なので、オッサンはとやかく言わない。
「今日、秋星の親父居ねぇのか」
「ウチの?さぁ、壇家のとこじゃね?」
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時