042:一栄一落 ページ42
オッサンの口から煙が浮かぶと、それは空に登りバラバラになって消える。
まるで猫が動くものを追うように目で辿って居ると、オッサンはそれを見ていたのか「A、」と呼んできた。
「興味あんのか?」
「煙草に?」
「そうだよ」
ふぅ、と煙を私に吹きかけてくる。
思わずげほげほと咳をした。
なんだこれ、目に染みるんだけど。
手で煙をぱたぱたと払っていると、オッサンは愉快だと言わんばかりにゲラゲラ笑う。
マジムカつく。オッサン本当に性格ゴミだよな。
「うっざ、オッサン副流煙とか考えたことあんのかよ。ダイレクトに吸ったんだけどこっちは!!」
「俺の吐いた煙が、お前の中に入っていくって考えるといい感じにいやらしいな」
「死ねッッ!!!5回は死ねッッ!!!」
それでも、オッサンはガキおもしれぇ〜と言わんばかりに煙草を吸い続けた。
というか、オッサンからたまに香ってた匂いは煙草の匂いだったのか。
「…オッサン煙草吸うって知らなかった」
「たまにな、たまに」
オッサンはまた煙を空に吐く。
それをじっと眺めていると、徐にオッサンはポケットから箱を取りだした。
そして、私の前に「ん」と差し出す。
「…なんだよ」
「なんだよ、じゃねーよ。俺に付き合えって事だ」
「やば、オッサン未成年に煙草勧めるとか倫理観どうなってんだよ」
「ギャルが倫理観とか言ってんじゃねーよ。っつーか、吸ったことねぇの?悪い事ばっかしてんのにか。ん?どうなんだAチャン」
「きっっしょ!!ちゃん付けすんな!」
私はやけくそに箱をひったくると、1本取り出し咥える。
私ってば、挑発されると本当に単純よな。
オッサンは私のコントロールが上手い。
ムカついてしょうがない、本当に。
咥えて、私はオッサンに手を差し出す。
ライターを寄越せと。
するとオッサンは、「勿体ねぇだろ」と言って煙草を口に咥えたまま差し出してきた。
「…?」
何がしたいか分からずキョトンとする。
見兼ねたオッサンは、突然私の両頬をぶにと片手で掴んで顔を近づけさせた。
「じっとしてろ、火傷したく無かったらな」
咥えたままオッサンは器用に喋る。
オッサンが咥える煙草から私の煙草の先へ火が移り、次第に先は煙を浮かばせた。
顔が凄く近い。
煙草の仄かな光が、オッサンの顔を微かに照らす。
睫毛が顔に影を作る。
少しして、私の煙草から煙が登り始めるとオッサンは手と顔を離してくれた。
「オッサン、睫毛長ぇな」
「男に言う言葉か?」
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時