038:運否天賦 ページ38
「ふぅん…吉祥ね」
「あ、あの」
「ん?」
「アレ、大丈夫…ですか?」
吉祥は“アレ”と指を指す。
その先には、先程Aが術式により破損させたトラックがあった。
Aは「あー…」と言いにくそうな声を上げたあと、この青年に術式を説明したって混乱を招くだけかと判断しAは「大丈夫じゃね?」と返した。
Aの適当そうな返事に、吉祥は微妙そうに相槌を返す。
「っつーか、君こそ“アレ”大丈夫なのかよ」
Aは彼の背後を指さす。
「君のネコちゃんじゃねーの?」
吉祥は振り返る。
そこには、毛を逆立て威嚇をし続ける例の猫がいた。
何処にでも居る三毛猫という感じだったが、やはり片足だけが違った。
「あ、いや、俺のじゃないんです。近くで見つけて…ほら、足怪我してるでしょ?手当してあげようと思ったんですけど、」
吉祥がゆっくりと猫に手を伸ばすと、猫は爪を剥き出しにし彼の手を叩いた。
「この有様なんです…」
吉祥は眉を下げ笑う。
優しげな顔。どうにも、額の縫い目だけが不釣り合いでAはそこに目が向かってしまっていた。
手術したばっかとかかな。
Aは猫を一瞥すると、その猫の前でしゃがんだ。
「ほれ、チッチッ、ネコちゃんこっち来な」
「ちょ、危ないですよ!?」
ぎょっとする吉祥だったが、その後すぐ彼はよりぎょっとした。
威嚇していたはずの猫が段々と落ち着きを取り戻したかと思えば、Aに自分から寄って行ったのだ。
猫を抱き上げるAを、呆気に取られた吉祥は目で追う。
Aは視線に気づくと、にっと笑った。
「私、なんでも引き付ける体質持ってんの」
Aは猫の顎を撫でてやると、猫はゴロゴロと気持ちよさそうに声を鳴らした。
よく分からない事を言われた吉祥は、相変わらず呆気にとられていた。
「そっかぁ…じゃあ、君はネコちゃんを助けようとして道路に飛び出たんだ」
猫を撫で続けながら言うと、Aは吉祥を見てふっと表情を緩めた。
「すっげぇじゃん。誰にでも出来ることじゃねーよ」
「…!」
その瞬間、吉祥は言葉を理解して途端に恥ずかしくなった。
ただ単純に、このままだと猫が轢かれてしまうと思ったから衝動的に体が動いた、ただそれだけ。
吉祥は頭を搔く。
矢先、Aが猫を抱いたまま何処かへ歩き出した。
「来な、吉祥」
「え!?」
「私、可借夜A。手当てすんだろ?手伝ってよ」
吉祥は言われると、急いで立ち上がり彼女の後を追いかけた。
619人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時