037:合縁奇縁 ページ37
片足を怪我している。
ひょこひょこ片足を引きずり、猫が駆けていく。
本来なら、もっと早く走る事が出来るのだろうけれど怪我がそれを邪魔していた。
一体猫はどこに向かっているのだろう。
なんて、眺めていると暫くしてAは顔を強ばらせた。
「あの猫……道路渡ろうとしてる……!」
これはまずい。
Aが動きかけたと同時、またもや目の前を何かが駆け抜けた。
今度は猫なんかじゃない。
ハッキリとした人の姿だ。
猫を追いかけている。
「危ないよ…!こっちにおいで!」
猫を追いかけた人間が、道路へ飛び出た。
Aはぎょっとする。
トラックが来ている。
トラックは突然飛び出してきた猫と人間の姿に、焦ってクラクションを鳴らしている。しかし、トラックも急には止まれない。
「……ッ」
Aは気づくと走っていた。
上手く使えるかは分からないが、こんな時に使わないでどうするんだ。
道路に飛び出て、素早く人差し指を立て術式を繰り出す。
そして、人間と猫に体当たりをすると、少女の力とは思えない程に一人と一匹は歩道へと弾き飛ばされた。
勿論、Aが体当たりした所でたかが人間一人と一匹が弾き飛ばされるわけが無い。
Aは、瞬時に歩道近くの建物と彼らを引力で結んだのだ。
彼らがそちらへ引力により引かれるように。
とはいえ、術式が上手くいったわけでは無かった。
何の因果か、トラックも被害を被りバンパーが破壊されていた。
トラックの運転手は無傷であったし彼らの事を轢かずに済んだ訳だが、何も当たっていない筈のバンパーには疑問を抱いていた。
わざわざ降りて、「…どういう事だ?」と眉を顰めている。
Aは「あちゃ、まだ上手くはいかないか」と思ったが、それでも被害がこのレベルで済んだのはかなり幸運だった。
「アンタ、怪我は!?マジ危ねぇな!?」
Aは体当たりしてしまった人間に尋ねる。
青年であった。
近くで猫は、事の出来事を理解出来ていないのか毛を逆立て威嚇していた。
路面にダイレクトに体をぶつけた青年は、片手で体を摩り起き上がる。
「す、すみません、た、助けてくれて…ありがとうございます…!」
顔を上げる青年。
Aは彼の顔を見て、「別に、良いんだけどさ。無事なら」と返す。
なんとなく、不思議な空気がある青年だった。
「アンタ、名前は?」
思わず尋ねる。
青年は言う。
「名取、吉祥です」
彼の額には、不可思議な縫い目の後があった。
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時