030:極荒療治 ページ30
「肩の関節外しちまったわ」
「クソ…ッ、マジで、女の子相手に…ッそんなことするとか、い゛ッ……」
痛みに顔を歪めるA。
甚爾とて、そこまでするつもりは無かった。
今まで、Aを好き勝手に殴ってきたものの、実際の彼の力であれば訓練初日にAは死んでいるだろう。
甚爾なりに力加減はしてきたつもりだ。
ただ、先ほどのAの行動には驚いた。
まさかここまで出来るようになっていたとは。
だからこそ、少し興が乗り力加減を間違えてしまった。
Aを座らせ、甚爾は肩に触れる。
「痛いか?」
「見てわかんだろ…ッ!」
「ここは?」
「だから痛、ぐッッ……」
甚爾が触れる場所を移動させると、無駄口を叩いていたAが突然黙り下唇をギュッと噛み締めた。
そうか、ここが一番痛いか。なんて思いつつ、甚爾は「なるほどな」と独り相槌を打った。
「治してやるよ」
「は、はぁ!!?」
素っ頓狂な声をあげた後、すぐにAは痛みに顔を歪める。
自分の叫び声がこんなにも響くとは。
「だいぶ荒療治だが、まぁお前も覚えておくと実践に役立つだろ」
Aの腕と肩に触れ始める甚爾。
その呑気な口調に焦ったAは血相を抱え、「待って、触んな!絶対無理ッ!!無理無理無理ッ!!!」と暴れだす。
しかし、甚爾はそんな事気にも留めない。
少しだけ眉間に皺を寄せ、めんどくさそうに「暴れんな」と一言言うと手にぐっと力を込めた。
瞬間、ほぼ比例するようにAは固まった。
体が強張っているのに甚爾は気付く。
ふと見れば、青ざめ今にも泣き出さんばかりに涙を溜めるAが居た。
その顔に、甚爾は驚いてしまう。
初めて見た。
あの強気で生意気なコイツが…
甚爾は短くため息をつくと、ふっと表情を緩めた。
「泣くなよ、大丈夫だ。上手くやる」
後頭部に手を添え、自身の胸に沈めてやるとそのままポンと頭を撫でてやった。
こんな宥め方甚爾のガラでは無かったし、やり辛いなとも思ったが、何よりAが『怖い』と思ってることの方が甚爾の感情に勝ってしまった。
Aは特にいつもの生意気な口は叩かず、ただひたすらにこくこくと何度も頷く。
体の力が少し抜けたようだ。
見届けた甚爾は、Aの外れた肩に触れそしてぐっと力を込めた。
___。
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時