023:狼貪虎視 ページ23
修練場に響くのは、練習具が風を切る音ばかり。
規則的になるその音を、夜蛾は遠くで呪骸片手に聞いていた。
ちくちく、ぬいぬい。
何故、Aが突然やる気を出したのか。
Aはここ数時間、練習具を片っ端から手に取り試しては素振りを繰り返している。
それに、たった2日見ないだけで傷だらけになっていた。
Aに聞くと、仕切りに不機嫌な顔をしたまま「秘密の特訓だよ、聞くな」と言われたのだが、特訓というか…。
夜蛾は顔を上げ、ちらりとAを見る。
「薙刀は私向いてないのかもな……なんかこう、近距離でボカーーっと殴れるやつ…」
あいつ、喧嘩でもしに行くのか…?
「おい、A。お前まさか、別の呪術師にでも喧嘩ふっかけたんじゃあないだろうな?」
念の為聞いておくと、あからさまに眉を顰め「はぁ?」と言葉が返ってきた。
「私が?喧嘩?売られた喧嘩は全部買う主義だけどさ、そこまで子供じゃねーっつーの。私、もう大人だぜ?」
いや、子供だろ。
とはいえ、Aの顔は本気で『馬鹿にしてんの?』という顔をしていたし、自分が心配する必要は無さそうだと夜蛾は呪骸に顔を戻した。
Aは気にしず、別の練習具に切り替え素振りに戻る。
ふと、夜蛾が再び顔を上げた。
「お前、金曜の時よりも動きが良くなってるな」
「マジ!!??」
食い気味に言葉が返ってきた。
目を輝かせ、それはもう嬉しそうに確認してくるAに、夜蛾は「あ、あぁ」と困惑気味に頷いた。
別に嘘じゃない。
「試しに呪骸と組手をしてみるか」
そこから、夜蛾は攻撃特化の呪骸と組手させることにした。
夜蛾はその光景を眺め、微かに瞳を丸くする。
金曜の段階では避ける事が出来なかった攻撃を、全て避けている。
明らかに、成長している。
それも、急速なスピードで。
Aが前線に出るには、一年はかかるかもしれないと思っていた。
強力な術式とパワーを持っているにも関わらず、全くコントロール出来ていない厄介なA。
「夜蛾、こんなの相手じゃつまんない」
声がし、夜蛾はハッと正面を向いた。
思わず目の前の光景に言葉を失う。
床にへばりつく呪骸。
その上に腰を下ろし、呪骸を完全に制圧しているA。
Aは、その上で欠伸を一つ。
「やっぱ、こんだけ怪我してんだもん。こんくらい成果出てなきゃ割に合わねーっつーの」
そして、にたと猫のような笑みを浮かべる。
「私がオッサンぶっ飛ばすのも、そろそろかな」
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時