サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ35)

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「あっ、え、ﾋｪｯ！？ちょ、や、待っ、かかかかか勝己く」

「煩くしたらコロす」

ﾋｨｨｲｲｲ！！何このかっちゃん！！？

予想外過ぎる彼の行動に、私の頭は大パニック。

つか近い近い近い近いｯ！！
頭が！！顔が！！息が！！
とりあえず色々近いｯｯ！！

「かっ…勝己君！ね、眠いなら保健室…」

「めんどくせぇ」

「じ、じゃあ椅子を3つ並べて…」

「枕無ぇと首痛くなるだろ」

「じゃあ！保健室から枕だけ持ってくれば！
私、ちょっと保健室行ってくるか…」

我ながら名案だと思ったが
彼は気に入ってはくれないらしい。

椅子から立ち上がろうとしたら、かっちゃんは私の腕を掴んだ。

その目は鋭かったけれど、同時に何だか重たそうだった。

「…良いから、座ってろ」

「で、でも…」

「そんなに俺と離れたいのかよ」

不意な彼の言葉に、思わず私は目を見張った。

かっちゃんの表情は何処か物悲しそうで、腕を掴む力が少しだけ強くなる。

……そんなわけ、ないじゃないか。

だってかっちゃんは、私の大切な幼馴染みだもん。
出久に負けないぐらい、大好きだもん。

でも言葉にするのは何だか恥ずかしくって、とりあえず椅子に座り直すと
かっちゃんは再び私の肩に頭を乗せて、目を閉じた。

「…あと、『勝己君』なんてクソみたいな呼び方やめろ」

「えっ…？」

「昔みたいに呼べ。それが一番いい」

「…」

だって、わかんなかったんだもん。

前みたいに呼んだら、嫌われると思ったんだもん。

少しの間を空けて、私は決心すると
ゆっくりと口を開いて、震える声で発した。

「……………かっ、ちゃん」

「ん」

するとかっちゃんは『よく出来ました』とでも言うように私の頭をﾎﾟﾝと1度撫でた後
そのまま寝息を立てて、眠ってしまった。

その安心しきった顔に思わず私は微笑みを浮かべると
シャーペンを握り直して、再び課題に取り組んだ。

その後、課題は無事終わったものの
途中から数学と理科の化学式を間違えてしまったらしく

後日、追加のプリントを大量に貰い
かっちゃんと出久を巻き込んで、放課後3人で教室に居残った。