サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ32)

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合理的な放課後【相澤】ページ32

「先生にはお付き合いしている方はいますか？」

「彼女いない歴イコール年齢だ」

「では、どのような女性がタイプですか？」

「何事にも合理的な女」

「お好きなサイズは幾つでしょう？」

「お好きなサイズって何だ」

放課後、皆が教室から出て、先生が職員室に戻るまでの2人の時間。

私はこの時間がとてつもなく好きだった。

だってこの瞬間だけ、相澤先生を独り占めしているみたいで。

いつもだったら皆がいるから、こうもお喋りは出来ないし
それに、先生は何事にも合理的且つスマートに事を成す人だから。

普通に学校生活を送っていても、先生と話せるのは1日に一言二言程度。

だから私は、この数分間がとてつもなく好きだった。

「…てゆうか無孤、お前いつも放課後に残るのやめたらどうだ。合理的じゃない」

あら、でも先生はあまりお好きでは無いようだ。

資料に向けていた目をｼﾞﾛﾘと私に向けて、相澤先生は冷たく放つ。

…ちょっと傷ついちゃったかも。

「前にも言ったろ、時間は有限。こんな無駄な会話してる間にも時間は過ぎてく。

ヒーローになりたければ時間を無駄遣いせず、有効に使え」

「無駄じゃないですよ。私にとっては」

「俺にとってはとてつもなく無駄に思える」

「…」

…そこまで言わなくっても良いのに。

私はただ、相澤先生といたいだけなのに。

ただ一緒にいて、お喋りしたいだけなのに。

それ以上の事は望んでいないのに。

この気持ちが叶わないのはわかってる。
きっと先生に打ち明けたところで、適当にあしらわれるだけ。

いや、もしかしたら嫌われてしまうかも。

それが嫌だから、こうして少ない時間でも、貴方といたいのに。

それだけ、なのに。

「…………はぁ…」

俯いて泣きたいのを必死に堪えていると、ふと相澤先生の口から溜息が溢れた。

ああ、先生怒ってるかな。
こんな私を見て、イライラしてるのかな。

でも顔を上げる勇気が無くって、怖くて目を堅く瞑った。

その時、ぽん、と頭に何かあたたかい感触が乗っかった。

そしてそれはぎこちなく私の頭の上で動かされ、私は思わず顔を上げた。

「喉乾いたから飲み物買ってくる。

……ついでにお前も来い」

「…！」

まさかのお誘いに、私は目を見開いて先生をじっと見つめた。

すると先生はまたぽんぽんと、私の頭を撫でてからすぐ横を通って行った。

……今の行動は先生にとって、私を連れ出すのに合理的な方法なのですか？