サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ23)

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黒き翼のレクイエム【神童】ページ23

『黒き翼のレクイエム』

俺が人生で3曲目に創り出した曲だ。

この曲を創り出したのは俺がまだ中学2年生だった頃だ。
今では世界で有名になっているようで、よくCDショップでシングルを見かけるし、動画でもアレンジされたものなども最近では多くなった。

その当時に俺は『齢14の天才ピアニスト』として持ち上げられ、忽ち俺は有名になった。

今では各地の音楽界の有名どころで伴奏を披露する日々だ。

3曲目、と言うことはもちろん他にも2曲作曲したのだが、ソレは公開していない。

元々は趣味というか、自己満足で作曲していたからだ。
だからその2曲を知っている者は、創り出した俺と

友人だった、黒羽Aだけだ。

黒羽Aとは、中学生時代に出来た友人だった。

漆黒色の美しい髪に、宝石のような黒い瞳。
それでいて何処か後ろ暗い雰囲気を醸し出す彼女は人形の様に美しく、まるで一つの作品に思えた。

彼女もピアノを演奏するそうで、たまに放課後に音楽室に集まって、お互いの伴奏を聞きあっていた。

それはまるで2人だけの小さな演奏会のようで、俺はその時間が好きだった。

彼女の伴奏は素晴らしいもので、俺なんかでは到底足元にも及ばなかった。
何故こんな素晴らしい伴奏を弾く彼女が有名にならないのか、不思議に思ったくらいだ。

そんな彼女の伴奏も、俺は好きだった。

そんな彼女だが、現在はもう既にこの世にいない。

あの美しい彼女は、俺が有名になり出した頃に突如として消えてしまったのだ。

ある言葉を残して。

『貴方はそれはそれは素晴らしい人生を歩んで行く事でしょう。
だけど、きっと私は心の底から祝えない。

一生、背負ってもらうから』

そう言って、彼女は俺の目の前からいなくなってしまった。

あれから3年後、俺は17歳になった。

俺は今でも、あの曲を弾いている。

毎日、毎日、まるで誰かに聴かせるように。

誰かを鎮めるように。

「……さぁ、行こうかA」

右の黒い瞳を片手で覆いながら、俺は呟く。

そして真っ黒彼女色の舞台袖から、スポットライトが照らす輝かしいステージの方へと歩み出す。

俺はいつまでも弾き続ける。

彼女が少しでも鎮まるように。

彼女が少しでも安らかに眠れるように。

彼女に、彼女の為だけに創り出した

『黒き翼のレクイエム(黒羽の鎮魂曲)』