どうしてなんだ ページ17
「わかってました。遅かれ早かれ、こうなる事は。だってお父さんの余命から考えたら、春なんて迎えられるはずないじゃないですか」
悲しそうに、でも何処か愚痴を吐くような感じで古城は吐き捨てると、ぎゅうっと拳を握り締める。
よく見たらその拳の中には何かが握られていた。
何が握られているのかはわからないが、結構強い力で握り締められてるのは大丈夫なんだろうか。
「でもっ……そんな、希望を与えられたら
誰だって、縋り付きたくなるじゃないですか。
誰だって真っ暗な場所より、少しでも明るい所に行きたいに決まってるじゃないですか…！」
ﾎﾞﾛﾎﾞﾛと彼女の瞳から涙が溢れる。
まるで壊れた蛇口のように次から次へ。止めどなく。
そうして力無く俺の身体に寄りかかって来たので
俺はそっと彼女を抱き寄せた。
……彼女はバカだが、アホではない。
だから親父さんからの手紙を貰った時もちゃんとわかっていたんだと思う。『無理だ』って。
でも、それでも。縋り付きたくて堪らなかった。
そんな守れない約束を守り、本当に春になったらまた会えると希望を持たずにはいられなかった。
だってそうしないときっと、彼女は崩れていたんだろう。
今のように。
古城にとってあの手紙は『ライナスの毛布』
今にも崩れそうな足場を支える唯一の柱。
きっと俺が知らないだけで、彼女はもしかしたら不安で不安定になって、何度も泣きそうになった時があったのかもしれない。
それでも今まで何とかいつも通りに取り繕えたのは、あの手紙のおかげなのかもしれない。
父親との希望に思いを馳せ、それで今まで持ち堪えていたのかもしれない。
「どうして…！どうして、勝手にいなくなるんです？
どうしてまた私を1人にするの？
こんな事になるんだって、お父さんも分かってたはずなのにっ……！なのに、なんで……私にまた優しくしたのっ……！！」
だんだん口調が荒くなり、いつもの敬語も外れていく。
今まで溜めに溜めたモノを全部、全部吐き捨てる。
その癇癪は歳の割には幼くて。
まるで小さい子が憤慨しているようだった。
終いには俺の腕の中で暴れ出しそうになったので
俺は抱き締める腕に力を込め、肩を摩って落ち着かせてやる。
彼女は怒りで興奮しているのか、呼吸が荒くなり
でも何とか踏みとどまっているのか、暴れる事はなく
かと思えば、急に力無く項垂れた。
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＊IJu＊(プロフ) - 白銀さん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて嬉しいです^^更新頑張りますー！ (2021年11月27日 23時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
白銀 - めっちゃ好きです。頑張ってください！ (2021年11月25日 0時) (レス) @page4 id: e22066a027 (このIDを非表示/違反報告)
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