【銀魂】江戸に住んでもろくなことない。

37.　面影 ページ37

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屯所、縁側にて。

差し出した土方スペシャル −究極(アルティメット)−を
箸で掻き込む土方さんをみて、
口に出そうとした言葉を飲み込む。

流石に沖田くんから聞いてるか。


この度、
沖田くんと恋仲になりまして。


今日、各所で何度その言葉を口にしたかわからない。

しかしその言葉の小っ恥ずかしさは
何度でもなれることができなかった。


夕暮れ。

オレンジに染まる世界では
土方スペシャル −究極(アルティメット)−さえも
キラキラと輝いて
美味しそうに見える…訳ではない。


「随分イジられたみてぇだな」


「あぁ…それはもう
近藤さんなんて、もうスピーチがどうとか…」


「ったく、どいつもこいつも浮かれやがって。

…まァ、よかったんじゃねェか。
収まるところに収まったようなもんだろ」


「そうですね…でも、これでよかったんでしょうか」

「あ？」

「ほら私って
特に何か剣術に長けている訳でもない、か弱い女の子じゃないですか。
守ってあげたい感じの」

「嘘みてェに鋼メンタルだけどなそういうところは」


「日常的に刀をぶら下げるような世界に住む人に
月並みの女が、何処まで釣り合うのかなって。
もしかしたら、存在そのものが足手まといになるかもしれない

…たまにそんな夢を見ます」


遠くで鳴いている烏に応えるように
近くでもう一羽の烏が鳴き始めた。

土方さんは何も答えない。

私が示すことを
鬼の副長ともあろう人が、考えていない訳がないのだ。


「過激な攘夷浪士共にとって
真選組の縁者は、いい鴨でしかねェ。
どんな善人でも 奴らの大儀の前にはただの駒として映るらしい。
…そんな馬鹿共を、俺は反吐が出るほど見てきた

だから、俺は背負えなかった」


「土方さん…、もしかして」


「…なんとでも思え。
だが、そうならねェように俺らも相応の強さを求めてきたつもりだ。
リスクがあるなら、そこに打てる手は打つ。その辺は安心しろ」


きっとこの人は
態度には絶対に出さないけど、
真選組の皆のことを考えていて
そしてまた、彼らを信用している。

そこには私も入っているということが
じんわり伝わってきたのが嬉しい。



ヒラヒラと舞ってきた蝶蜻蛉に
人差し指を差し出す。

私の指で羽を休めると、それはすぐにまた飛んで行ってしまった。


「メタリックブルーっていうんですって、あの色」

「ああ…、綺麗だな」


そう呟いた土方さんは、
なんだかとても懐かしそうな目で微笑んでいた。


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