【銀魂】江戸に住んでもろくなことない。

30.　ぬるま湯に浮かぶ ページ30

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かぽーん

こんな時に使う効果音といえばコレかな。


だだっ広いお風呂場に一人。

大きな湯舟に浮いてる〇毛は手で扇いで作った波で遠ざけて
ややぬるくなったお湯の中で足を伸ばす。

ちょっと抵抗はあるけど、
やっぱり身体はあっためたかった。


私、本当にここに泊まるんだ。それも沖田くんの部屋に。

…あれ、結構ヤバくない？


沖田くんに押されるがままについてきてしまった自分に冷や汗が流れた。


意識してしまった途端
彼の顔が頭に際限なく浮かんでくる。


思い出せば彼の色んな顔。

『俺は本気ですぜ』

あの時の真剣な目
私は恥ずかしくて、まっすぐ見つめられなかった。

…お姉さんとして接していたのに
それじゃあ調子が狂ってしまうじゃないか


それでも熱を帯びた彼の瞳が私を捉える度に、
きゅぅっとした何かが
つま先から脳天までを突き抜ける感覚に嘘はつけなかった。


核心をつくような話題は
私が避けてきていた。

それを察してくれたのか、彼は無理に
その後を問い詰めるようなことはしなかった。


沖田くんの心が
私から離れてくれないことをいいことに

私はそんな気持ちのいいところだけを切り取っていたんだ。


『ずりぃ女』

銀さんの言葉が
ぐおんぐおんと頭を回る。

もう、お母さんは超えたかもしれない。


いい加減認めよう。向き合おう。

お姉さんごっこは
そろそろ終わりにしなくちゃいけない。


…う、やばいかも。

ブクブクと音を立てて口元を水面に埋める。
お湯は温かいというには少し冷めすぎている。

一晩、過ごす…。

ぼっと顔に熱が集まる。


ずっと見て見ぬふりをして逃げていたのに
どうしてこんな時に
こんなことを考え込んでしまうのか。


外ではそんな沖田くんが
待っているというのに。

どんな顔をして、私は出ていけばいい？


「Aさーん？まだぁ？」


不意に響いた沖田くんの声に
ビクッと肩が跳ねる。

そろそろ上がらなきゃ。

ザバッと湯舟から出て、脱衣所へ出る。

身体に纏わりつく水気を拭きとって
白シャツを羽織った。

やや小柄にみえる沖田くんのサイズでも
私が着ると丈の短いワンピースのようになってしまう。

結構大きいなぁ。


それに、


髪も、身体も、服も

全部全部、沖田くんの匂い。



「彼シャツ」

不意に声をかけられ振り返ると
悪戯な笑顔で沖田くんが戸口に立っていた。


「…えっろ」

そうして舌なめずりをする彼に
私の喉元はひゅっと音を立てて鼓動の高鳴りを知らせた。


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