24. 昔話 ページ24
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お母さんのことで
最初に浮かぶのは
あの優しい手。
私の髪を撫でてくれる手つきはいつも丁寧で
ちょっと目を閉じただけでぐっすり眠ってしまいそうなほど。
私を褒めてくれる時、慰める時、
いつもお母さんは私の髪を撫でてくれた。
季節に咲く花を教えてくれて
私の知らない詩を歌って聞かせてくれたお母さん
お金がなくたって
お父さんがいなくったって
友達がいなくったって
お母さんがいたから、私は幸せだった。
様子がおかしくなり始めたのは、いつからだったか。
夜中、目を覚ますと
居間の灯りがついていた。
お母さん、まだ起きてるのかな？
様子を見に行こうとして、
聞こえた言葉。
「ごめんねぇ、ごめんねぇ…」
お母さんの声は哀しげに震えていた。
笑っている声も、困っている声も、怒鳴っている声も、
全部知ってるのに
そんな声を聴いたのは、それが初めてだった。
「なんでうまくできないんだろうねえ…」
何度も謝りながら、
私の名前を呟く。
襖の隙間から覗くと、こちらに背を向けて
お母さんが座り込んでいる。
傍らには包丁が落ちていた。
何をしているのかは、当時の私にはわからなかった。
でも、
そのあたりから増えていったお母さんの傷は
つまりそういうことを指していたんだろう。
私が、新八くんくらいの歳。
いつも通り
仕事に出かけるはずのお母さんを見送りに、玄関に立った。
「いってくるね」
すぐにわかった。
あぁ、この人はこれから
＿死にに行くんだと。
最後にみたお母さんの顔。
笑ってたのに、その眼は空っぽで、
私のことなんか見てなかった。
"じゃあね"って
そういったお母さんの顔が
あまりにも晴れ晴れしていて
いかないで、
なんて言えなかった。
ちゃんと向き合えるほど大人にもなれなくて
泣いて喚けるほど子供でもなくなっていたんだ。
…私が殺したと言われても
言い返す言葉がない。
天涯孤独となったのならば
手放して後悔するものはない。
この先叶えたい夢もない。
私もそっちに行っていいかな、お母さん。
何度も考えたことだった。
それでもお腹が空けば
好きな物を買って食べたし、
怪我をすれば痛くて涙が出た。
そんなある日、
近所に棲みついていた猫が生んだ仔猫をみて
ふと考えた。
そうだ。
どうせ死ぬならば、
知らない世界を見てから死のう。
そう思って江戸に来たのは
もう数年前の話だ。
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みけ(プロフ) - 笛さん» 毎度ありがとうございます＾＾ 沖田くんメインで書いてるので、銀さんには少々我慢して頂いてますｗ (2021年2月19日 21時) (
レス) id: 85e7eab2a4 (このIDを非表示/違反報告)
笛 - 今回の更新最高です！！！銀さんがかわいそうな気がするけどwwww (2021年2月19日 20時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» ありがとうございますっ！お待たせしております。ただいま予定が立て込んでますゆえ、もう少々お待ちください…！ (2021年2月10日 18時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
笛 - 毎日寝る前に更新チェックしてます！！！！ (2021年2月10日 1時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» コメントありがとうございます！わたしの文章でそう感じていただけることが幸の極みでございます…！精進いたします！ (2021年2月7日 20時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：人魚ちゃん | 作成日時：2019年2月14日 4時
