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半ば無理やり母さんとの会話を終え外へ出ると、ドアの外で待機していたのかハオヒョンが立っていた
「おかえり」
『あれ?ハオヒョンどうしたの?次ヒョン?』
「……んー……ただ、なんとなく来ただけ」
『?』
「泣き虫がいないか探しに来ただけだよ」
そう言って僕の肩を労わるように抱きながら歩き出すヒョン
泣いてない…はず、と思いつつ少しだけ目を擦ってみた
『……泣きそうな顔してました?』
「僕にはね、そう見えただけ」
『ふふ』
周りは会話や機材、音楽でたくさんの音で溢れていたけど、ハオヒョンは何も話さなかった
ただ隣にいるヒョンの体温はすごく暖かくて、1人で冷え切った体にゆっくりと温度を戻してくれるように感じた
少しだけ周りの音が静かになり始めた頃、ハオヒョンは静かに口を開いた
「Aはさ」
『…うん?』
「時々寂しそうな顔をするよね」
『……え?』
「楽しそうに踊ってても、精一杯歌ってても、みんなに囲まれて笑ってても
ふとした瞬間、まるでこの世にひとりぼっちみたいな顔をする」
「…僕は何がAをそうさせるのかは分からない」
「でもきっと、僕らでは埋められない“何か”を想うたびにきっと、Aは不安や孤独を感じちゃうのかもしれないね」
ハオヒョンは歩みを止めずに、言葉を一つ一つ選びながら話す
僕はなんとなくヒョンが核心に触れずとも、僕の弱いところをゆっくりと紐解く感覚に少しだけ怖くなってヒョンの練習着を強く握った
ヒョンはその手に気づいたのか、その手の上から自分の手を重ね話し続けた
「Aは優しい子だから、きっと自分よりも大切なことを守るのに必死なんだよね
………でもね、厳しいことを言うけれど、
先のことなんて誰にもわからないんだよ」
「今を積み重ねた先にある未来を心配してもAに変えられるのは今この状況だけ」
僕らはいつの間にか自分たちの部屋の前まで来ていて、ヒョンはそのまま誰もいない部屋の中へと入り、自分のベッドに腰をかけると僕を横に座る様促した
軋む音を立てながら横へ座ると、ヒョンは僕の手を握り、手の甲をさすりながら言葉を続けた
「A」
『…はい』
「よく聞いて。これはね、君が教えてくれたことなんだよ
今全てがうまくいかなくてもいい、って。今の僕たちを讃えてあげようって」
「だから僕は今、未来をあまり心配せずに、今この状況を楽しんで自分の力で変えようと必死になってる」
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作者名:えのもと | 作成日時:2023年3月19日 14時