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綺麗な星がよく見える夜だった
窓の外はすっかり暗くなっていて、あまり澄んでいない韓国の空が今日は珍しく晴れていた

社長に言われた言葉を何度も何度も咀嚼し、僕の中で答えを見つけようとするけど
気持ちの整理がつかないままだった

部屋の中をソワソワと歩き回っていたが足を止め、僕はようやく電話を手に取った




『もしもし、母さん?』

「あらA。どうかしたの?」

変わらない母の声だ

『声が聞きたくなって…、母さんは元気?体調は変わりない?ご飯は食べた?』

「元気だよ。Aこそちゃんとご飯食べてるの?見るたびにガリガリに痩せちゃって……ママは自分よりもAのが心配だよ」

『ははは、僕より元気そうだねㅎㅎㅎ』

「当たり前でしょ〜?ママは元気だけが取り柄なんだから」

電話の向こうでくすくす笑う母の声をきてほっと安心する

家事をしていたのかお鍋のぐつぐつと煮える音や、まな板を軽快に叩く包丁の音、野菜の綺麗な瑞々しい音が聞こえた
昔から変わらない実家の音に自然と口角が上がる










一通り母と話し終え、戸惑いと迷いを抱えながらも本題に入ろうと一呼吸置く

『……あのさ…………』

「………うん」

『っ』

あまりにも優しい母の声に
“帰ろうと思う”
そう言いかけた唇を噛み締めた

『…新しいオーディション番組に………出てみようと思うんだ』

「……うん、そうなんだね」

『有名な番組で…きっと日本でも見れるはずだよ』

「…ちゃんと見れる番組と見方を教えてね?ママ機械には弱いんだから」

『うん。絶対教える。近所の人にも教える』

「ふふ、ママが有名人になっちゃうわね」

『翻訳がついてないから見るのは一苦労かもしれないけど』

「頑張るね」

『うん。僕も助けるから』




僕の言葉の後に、母の言葉は続かなかった



少しの間沈黙が続き、ヤカンが吹き上がる音でその沈黙は破られた




「 ……………………大変な、番組、……なのかな」



母の弱々しい声が耳に届く



『…この番組自体が有名だし、知名度とか成功は付き物だけど、正直すごく大変な番組だと思う…』

「そっか」

「…A、こんな機会きっと滅多にないんだから、みんなに恩返しできるように一生懸命頑張るんだよ?私の息子のAなら絶対できるって信じてる」





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作者名:えのもと | 作成日時:2023年3月19日 14時

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