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舞台袖、緊張する僕とはお構いなしに時間は刻一刻と進んでいく
そして


いよいよ、ゴーのサインが出る



「……A練習生、入場どうぞ!」
『はい…!』



まだ少しだけぎこちない歩き方で舞台へと一歩、一歩と踏み出す

最初に入場してきた時は緊張のあまり気づかなかったけど、自分の今立っているステージは果てしなく大きく、そして思ったよりも人の顔がしっかり見えることに気づいてしまう
ライトは想像よりも眩しく、カメラは信じられないほどの数だった

『っ……』

歩け
歩け
止まるな
動け


そう言い聞かせながら無理矢理に動かす足が

一瞬


『へっ…』






トサッ









「……」
『……』


何が起こったか理解できないまま僕の視界は急に下へ急降下し
気づいたらステージの真ん中でぺたりと座り込んでいた

シン…と静まり返る会場と
放心状態の僕




…………ぼく、もしかして






「ブフッ!!!」






「あはははは!!!」
「うけるㅋㅋㅋㅋ」
「待ってどうしたんだよ〜!ㅋㅋㅋㅋ」
「ひぃ〜〜〜ㅋㅋㅋㅋ」


口々に笑い始めるマスターさんたちを見て、自分が本当に転んでしまったことを自覚した
それに続くように練習生の子達が大爆笑を始めた


「Aㅋㅋㅋㅋㅋㅋ」
「やってくれたな〜ㅋㅋㅋㅋㅋ」
「Aきようぉ〜〜〜!!!!♡」
「いいぞ〜〜〜!!」


周りから聞こえる歓声と可愛いの声に思わず耳を塞ぎながらすぐさま立ち上がった

『………申し訳ありませんでした』

きっと真っ赤になっているであろう顔を少し背けながら謝罪の言葉を述べれば、それが逆効果だったのかさらに笑い声と歓声は大きくなった

「あ〜〜〜〜面白い」
「笑った笑ったㅎㅎㅎ」
「可愛かったですねㅎㅎㅎ」
「キョトンとした顔まで含めて面白かったㅋㅋㅋㅋ」
「いやあ彼は持ってるね〜」

僕は改めてステージの真ん中まで移動すると、気持ちを持ち直し挨拶をする

『アッアニョハセヨ。日本から来た練習生Aです。誰にも負けない熱意を持ってきました。よろしくお願いします』

そう言うと拍手が起こる

「いや〜“熱意”は十分伝わりましたねㅎㅎㅎ」
「空回ってましたけどね」
「ははっ若者はこうでないと」
『本当にすみませんでした……』

まるで攻め立てるようなマスターさんの言葉に再度謝罪を告げると、悪い大人たちがまたケラケラと笑い出す

(今後一生笑いものにされてしまうんだろうな………)

心の中で自分を供養した




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作者名:えのもと | 作成日時:2023年3月19日 14時

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