君を待っていた【第五人格】

40分の崇拝　墓守 ページ37

僕が中庭の扉を開き中を見回せば備え付けのベンチに彼女が眠っていた、手には難しそうな分厚い本が握られていて本を読んでるうちに眠ったのだろうと簡単に予想がつく。連日試合に出てはリッパーに執拗に追われた疲れが出たのだろう、音をたてないように少し近づいて顔をみればやはり顔色が悪く疲れているのは確実となった。

疲れてるならここで寝るより起こしてベッドなどに誘導した方がいいのだろうか？しかし今ここで寝ているのを起こすのもどうなんだ？そもそも僕が彼女に触っていいのだろうか声をかけていいのだろうか、声をかける映像を頭に流そうとするがそんな映像が流れないので僕に声をかけることは不可能である。

彼女の顔をみると髪が頬をさらりと滑りくすぐったいのか少し頬が緩んだ彼女の顔、それをみて心臓の心拍数が多くなり、顔に熱が集まるのがわかる。僕はこれがなんだって知っているだって僕のことなのだから…僕は彼女、Aに恋をしているってことを

心労から少し毛先が痛んでる髪や普段より悪い顔色はいつも元気な彼女と違う印象を教えてくれる、普段僕は人がいる場所を避けてしまう癖があり彼女の顔は試合ない日でも見る機会なんて滅多にないが、見かける度彼女は輝いてるように見えた

これ以降僕が彼女を近くで見ることなんてないだろう
…僕はまた一歩また一歩と彼女に歩み寄れば歩み寄るほど僕の目の錯覚か現実かどんどんと神々しく輝いていく
近寄る度ズキリと心臓に痛みが走る…こんな僕が彼女に近づくという罰が心臓の痛みになってきているのだろう
近寄る度どんどんとその痛みは強くなり彼女は輝く…僕が罰を受けるほど美しくなるならば死ぬほどの罰を受けた時、彼女はどれほど美しくなるのだろうか？彼女が美しくなるのなら僕はどんな罰も受けよう

最も美しくなったAを僕が最初に拝められるなら安いものだ



僕は大きく歩み寄る
心臓に歩み寄った分だけの痛みが走り彼女は美しく輝く
脳に彼女の顔が焼き付き僕の心は彼女だけになり顔だけではなく体までもが熱に覆われる

「…A」

思わず彼女の名前を口にしてしまい僕は自分の口を両手で覆う
口を押えているが僕の喉の奥からひっひひという引きつった笑いが出てしまう、止めようとするが止めようとしても止まらない…どうしようと悩んでいれば彼女の瞼が開き瞳に僕が映り寝起きでろれつがうまく回らないのか

「…あんどるぅ‥？」

その一言は僕のキャパを壊してぶっ倒れさせるのに十分だった

起きてから20分経過　墓守→←観察していた58秒間　黄衣の王

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